この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第213巻収録。ゴルゴはアメリカ・テキサス州で銃規制に反対する活動家・シアラーの狙撃を依頼される。しかしシアラーのダミーの存在を疑うゴルゴ。一方、依頼人は不審死を遂げる。情報漏れを確信したゴルゴは依頼人と接触した豪華客船に潜入するが……。脚本:加久時丸
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銃による自衛もスナイパーの前には無力
銃規制を巡るアメリカ国内の意見対立をテーマとする本話。現在、全米のほぼ全てにあたる47の州でオープンキャリーが合法化されているそうだが、武器による自衛をいかに徹底しようとも、長距離からの狙撃には無意味だというラストの解説は痛烈な皮肉である。
普通にレストランで食事をしていたり、タキシード姿で客船に潜入したりと、ゴルゴの珍しい姿も必見。また、『ミクロの油田』のゲーリック氏とはまた異なる、ビル・ゲイツ氏モデルの人物も登場するが、この億万長者のマザコンぶりが、情報漏洩のカラクリを見抜く切っ掛けとなるのも面白い。
歩容認証システム以上の目を持つゴルゴ
本話で言及される「歩容認証」とは、歩き方の特徴から個人を識別する技術であり、遠方から対象を特定する唯一の生体認証手法と言われる。日本では大阪大学産業科学研究所の研究が有名で、2015年までには既に犯罪捜査にも活用され、成果を上げているという(※)。
例によって、そうした最新技術を作中に反映するセンスも流石だが、何より凄いのは終盤のゴルゴの観察力。事前に標的と影武者の映像を歩容認証で分析させていたゴルゴだが、本番では自ら対象の歩き姿を見て、本人と即断しているのだ。システム以上の目を持つ彼の恐ろしさが光る一幕である。
※出典:MONOist『顔認証より高精度!? 「歩き方」で個人を特定できる「歩容認証」とは』(2023年7月28日)
仕事への横槍は決して許さないゴルゴの掟
自らの仕事を妨害したり、秘密を暴こうとする者には決して容赦しないのがゴルゴの掟。本話で情報漏洩に絡んでいた豪華客船のオーナー、ヘックマンもそれは百も承知だったようで、ゴルゴの前で震え上がって観念する彼の姿は印象的だ。
全てを打ち明け、偽情報による標的のおびき出しにも協力するものの、直後にあっさり始末されてしまうヘックマン。ゴルゴとしては、依頼人の敵討ちという訳でもないだろうが、自分の仕事に横槍を入れた彼を生かしておく道理はなかったのだろう。スカイダイビングによる鮮やかな潜入手法も含めて、痛快な粛清劇だった。
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東郷 嘉博
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