この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第140巻収録。舞台は中国。信者数が一億人を超え、国外の華僑たちをも巻き込む巨大勢力となった、新興宗教「金鵬来」。これに脅威をおぼえた康国家主席は、人民解放軍の龍に「金鵬来」の殲滅を命じる。しかし姿の見えない教祖・紫洪史を追い詰めることができない龍は、最後の手段としてゴルゴに救いを求めるのだった……。
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そっくりに描かれる人描かれない人
デリケートなテーマながら、ゴルゴシリーズで宗教が扱われることは多い。『白龍昇り立つ』ではチベット仏教の指導者であるダライ・ラマ14世が登場。キリスト教のヨハネ・パウロ二世は『国王ゴードインの依頼』などに登場している。
本作に登場する中国系の新興宗教「金鵬来」は明らかに「法輪功」で、指導者の柴洪史は李洪志に違いない。ただし柴洪史の外見は李洪志とは似ても似つかない。作中で殺してしまう人をそっくりに描くわけにはいかないのだろう。一方で金鵬来や信者達の弾圧を命じる中国の首脳陣はそっくりに描かれている。
日本からの“貢ぎ金”の流入
ニューヨーク華僑の老人が語る格好で日本の愚かな面も明かされている。老人によれば、「中国共産党は、友好と脅しの両面作戦で、日本からのODAや旧輸銀ローンの名目で六兆円もの莫大な貢ぎ金を捻出させた」とのこと。
本作の発表は2001年。2018年にようやくODA(政府開発援助)こそ終わったものの、ADB(アジア開発銀行)や世界銀行からの中国向け融資は続いており、トランプアメリカ大統領の批判も話題になったくらいだ。さらにトヨタ自動車は中国で省エネ車の生産を本格化するとのこと。形は変わっても“貢ぎ金”は続いているのだろう。
中国共産党の行く末は?
柴洪史の狙撃を依頼したのは人民解放軍の副総参謀長である龍東民。ゴルゴによる狙撃こそ成功したものの金鵬来の影響が収まるどころか拡大しつつある状況に驚き、「誰が劇的な射殺を依頼した」とゴルゴに言ってしまう。
そもそもゴルゴを、「たかが殺し屋」とさげすんでおり、自分で死亡フラグを立てまくったようなものだ。電話でゴルゴに一蹴された直後、どこからか飛び込んできた弾丸に龍東民は眉間を撃ち抜かれる。狙撃者も依頼者も不明だが、後者は中国共産党であることが示唆されている。敗者を排除し続ける中国共産党に未来はあるのだろうか。
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研 修治
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