この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第36巻収録。シリーズきっての人気テーマ「ルーツ編」の第3弾。ゴルゴ13を専属エージェントとして雇いたい日本政府は、ゴルゴの出生について調べ、ゴルゴの一族がもつ“ある奇病”の存在を突き止める。その事実を脅迫材料にゴルゴに要求をのませたい日本政府だったが……。脚本:外浦吾郎
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スメルジャコフはゴルゴ以上のマシーン
ゴルゴ出生譚エピソードであるが、ゴルゴはほとんど登場しない。影はあれど姿は見せないのに本人のルーツを探るストーリーが進むのがゴルゴの存在感を証明している。しかもその影がゴルゴであると思わせておきながら、父親と思われていたスメルジャコフがその影というミスリードに、ほとんどの読者がしてやられるところだろう。その点が今エピソードの魅力だ。
スメルジャコフがゴルゴ並みの狙撃能力を有する上に、猛スピードの車から女性を突き落とすなど、残忍かつ冷酷さを持ち合わせるゴルゴ以上のマシーンぶりがミスリードを可能にしたといえる。

あっぱれ、ミッサーシュミット
不気味で肝が据わっている往年の女スパイ。一筋縄ではいかない小柳美沙(ミッサーシュミット)が異彩を放っている。淡々と飛行機の扉を開けて、飛び降りる胆力には驚嘆するしかない。しかしながら、よく考えると小柳美沙が飛行機から飛び降りる必要性がよくわからない。
ゴルゴの母親でないことは美沙自身わかっているのだから、連行されたところで痛くもかゆくもないはずなのだ。任務遂行中のスメルジャコフに迷惑を掛けられないからなのか、単なる反発か。真相は薮の中だが、ミッサーシュミットのダイブと死への覚悟はあっぱれだ。シリーズで断トツの大和魂を持つ女性だろう。
一族がもつ“奇病”の正体とは
古くからの読者なら、ゴルゴにギラン・バレー症候群の持病があることはご存じだろう。今エピソードもゴルゴとスメルジャコフの間に血縁関係があることを証明する要素のひとつとしてギラン・バレー症候群(病名は表されていない)が取りざたされている。
ゴルゴが謎の筋力低下を発したのは第6巻『喪服の似合うとき』で、この時、病名は特定されていない。そしてシリーズ内で度たび取り上げられ、ギラン・バレー症候群はゴルゴの唯一の弱点と広く認知される。しかし『震える修験者』ではギラン・バレー症候群ではないとされ、修験道の修行で克服するシリーズ内でのコペルニクス的転回がなされている。

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片山 恵右

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