この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第6巻収録。畜生ばたらきの雄・羽佐間の文蔵の配下・江口の音吉を発見した粂八。一方、音吉が投宿した丹波屋のおかみ・お吉は、音吉の顔をみた途端に表情を曇らせる。音吉が丹波屋を選んだのには、ある理由があった……。左馬之助も加わり、羽佐間の文蔵一味を一網打尽にする痛快エピソード。
スポンサーリンク
煮つけで一杯の気晴らし
池波作品では食べものの描写も見逃せない。本作の冒頭では、浅草にある料理屋で沙魚(ハゼ)の煮つけが登場。「こいつで一杯やるのが、今の俺にはなによりの気晴らしでな……」とする平蔵は左馬之助に、「銕さんもすっかりとじいさんになったものよ」と言われてしまう。
煮つけた沙魚は『土蜘蛛の金五郎』などにも飯のおかずとして出てくるが、かつては江戸前(東京湾)でも簡単に取れる魚だったとのこと。ただし、開発が進んだ現代では随分と漁獲量も減っているらしい。ウナギのように天然ものが絶滅してしまわないことを願いたい。
密偵としての左馬之助の振る舞い
平蔵の若い頃からの知り合いである岸井左馬之助。剣の腕前は平蔵とほぼ互角。もちろん度胸もたっぷりで平蔵並みに修羅場もくぐっている。
平蔵が火盗改方長官の職に就いた縁もあって、火盗改方の手伝いをすることが度々となっており、平蔵にも、「すっかり火盗改方気取りだわ」と言われるくらいだ。
さらに、「近頃の左馬の探索は堂に入っていると与力、同心たちにも評判だ」とも言われているらしいが、勇んで旅籠に乗り込んだ左馬之助は探索相手に質問を重ねたことで怪しまれてしまう。平蔵の密偵として働くには、今少し未熟なところが多そうだ。
スポンサーリンク
波乱万丈な女将の生涯
旅籠の女将であるお吉の半生は、まさに絵に描いたような不幸の連続だ。ようやく女将として落ち着いた旅籠でも、思い違いから盗賊に関わってしまうのは何か悪い星回りでもありそうだ。
さらに身を守った結果ながらも盗賊をかんざしで刺し殺してしまう。さすがに重い罪かと思いきや、一切を明かされた平蔵は、「これは事故だ。しかと事故に、相違ない」と言いきって、お吉を放免している。
もちろん平蔵の独断ながら、こうしたお目こぼしは『狐火』『正月四日の客』などでも描かれている。現代の法制度では考えにくいが、多くの読者は納得するだろう。
この作品が読める書籍はこちら
研 修治
最新記事 by 研 修治 (全て見る)
- ゴルゴ13:第644話『心を撃て!』のみどころ - 2024年11月28日
- ゴルゴ13:第643話『怪力戦士イヴァノバ』のみどころ - 2024年11月11日
- ゴルゴ13:第642話『女の平和』のみどころ - 2024年10月1日