この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第11巻収録。風を患った左馬之助を見舞った帰り道、平蔵は阿呆鳥に声をかけられる。捜査の一環として話に乗った平蔵は、向かった宿で顔に青アザを持つ男を見かける。男は平蔵の知っている、ある男に酷似していた……。
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顔に青あざのある男
風邪を引いた剣友、岸井左馬之助を見舞った平蔵は上野界隈にて素人娘の斡旋を受ける事となる。もちろん我らが鬼平ともあろう人が素人娘を取って食おうなどという訳ではなく、世情の裏を見知ろうという目論みあっての事だ。
その素人娘おみよからの情報にて、顔に大きな青あざのある男が貸座敷を営んでいる事が判明するのだ。顔のあざという線から、平蔵や彦十がその昔にトラブルを起こした中間の富造であろうとの推測が立つ。
素行不良な富造が裏で仕出かしている悪事を暴く事が出来るのか。
鬼平と左馬之助のアクションシーンも見ものの作品だぞ。
あほうがらす
左馬之助の見舞いからの帰り道、阿呆烏の与平に声を掛けられた平蔵、そこからおみよと顔見知りになる訳だが。さて与平の職業は阿呆烏とある。俗にいうポン引きの一種なのだが、江戸時代の職業を調べてもこの阿呆烏という職業に辿り着かないのだ。
隠語だけにごく一部の界隈でのみ使われていた可能性もあるのだが、造語の可能性も含めて探ってみたぞ。初出としては池波正太郎の短編時代小説あほうがらすが1967年7月に登場している。その後、鬼平犯科帳の“二つの顔”、つまり本原作が1974年10月に登場となっているのだ。
それ以前の阿呆烏、あほうがらすに関する情報が皆無に等しい事から、愚かな者を揶揄する意味から転じて職業の隠語となった可能性も否定できないな。もちろん独自の解釈なので、ポン引きとしての阿呆烏という歴史的背景があるのかもしれない。もしそうであるならば、今後の為にもご指摘頂けると嬉しいぞ。
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珍しい鬼平の錯覚
鬼平の推察力や勘働きは、まずもってして盗賊たちの一枚上手を行くと称されるほどに鋭いのだ。しかしながら今回は残念ながら勘働きに狂いが生じてしまったようだな。
鬼平の勘働きが外れる事は非常に珍しいと言えるだろう。しかし盗賊たちの凶行を前に捕縛出来た事は素晴らしいな。捕り物シーンも鬼平、左馬之助、忠吾と大活躍をして格好良いではないか。
さて、若かりし頃の無頼から立ち直った鬼平だが、中間の富造はどうだったのか。この点も気になる部分ではあるが、本作にてしっかりと説明がなされているので、ぜひエンディングを楽しみに読んで頂きたいぞ。
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滝田 莞爾

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