この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第50巻収録。特殊な鋸を現場に残して立ち去った盗賊団。その鋸に見覚えがあった五郎蔵は、旧知の錠前師・宇兵衛を訪ねる。宇兵衛は事件現場で“瓜生の甚左”を見たと証言した。瓜生の甚左は、その昔、五郎蔵と命のやり取りをしたこともある“因縁の男”だった……。五郎蔵ファンは必見のエピソード。
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密偵たちの過去
鬼平犯科帳には多くの密偵が登場するが、本作で主役を張るのは大滝の五郎蔵だ。大滝の親分と呼ばれるダンディな風貌からも人気の高い密偵だ。盗みの三ヶ条を厳守する本格の大盗賊、蓑火の喜之助の手下として働いていた経歴からも、頭として盗賊をしていた頃はもちろん本格の盗賊だったぞ。
密偵が鬼平の仕事を手伝うようになるパターンは、粂八や五郎蔵のように元盗賊の経歴を持つ事も多い。その場合に現役の盗賊たちは、お上の犬という揶揄から“狗”と表現するぞ。
裏切り者のレッテルを張られる事も多く、場合によっては命を狙われる描写も登場する。この狗という呼び名は池波正太郎の造語であると言われている。一般的な単語ではなく、あくまで劇中での表現として覚えておくのが良いだろう。
大滝の五郎蔵
密偵の中でも非常に人気が高く、盗賊としての経歴や本格としての評価も高かった事からも、登場回数の多い密偵が大滝の五郎蔵だ。まるで任侠の世界に生きているかの如く、他人との心の繋がりを大切にする。
時として盗賊と格闘を繰り広げたり、捕り物に参加をするなど、腕っぷしの方もだいぶ強いのだ。劇中では後に同じ密偵である“おまさ”と結婚をして所帯を持つのだが、どうやら尻に敷かれているような描写が度々ある。その他にも五郎蔵は多くの作品に登場しており、五郎蔵が主役級の人気作品としては『狗』『白浪看板』『火事場の狐』などがあるぞ。
本格と兇賊の関わり
五郎蔵が本格の盗賊として掟を守る事を最重視していた事は述べたが、それが故に血の気が多い他の盗賊とは内部紛争が絶えなかったようである。本作も蓑火の喜之助の手下として共に働いていた仲間の甚佐がストーリーの軸となっている。
掟に背くような行動をした甚佐を五郎蔵が咎め、それを根に持って逆恨みをする流れだ。このパターンに五郎蔵が見舞われるケースは非常に多く、ある種でお約束のようにもなっている。
しかしその都度、五郎蔵の男意気や義侠心が描かれるので、更に五郎蔵は格好よくなって行くというからくりがあるのだ。本作は五郎蔵ファンには堪らない一本だろう。そうではない読者の方にも、これを機に五郎蔵の格好良さを知ってもらえたら嬉しいぞ。
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滝田 莞爾
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