この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第206巻収録。高額の税金を納める富裕層が、その税金を低所得者に使われるのは納得がいかない。そんな価値観から、富裕層だけが住み、富裕層のためだけに税金を使う街を新しく作ってしまった“サンディ・スプリングス市問題”を下敷きにした短編社会派作品。
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正直者は馬鹿を見て狡猾な者は地獄へ堕ちる
さすがは銃社会のアメリカ、街中のレストランで店主がいきなりライフルを持ち出して銃撃戦になったのには驚いた。街が寂れると人心も荒れ、犯罪は多発する。自衛のためには銃が必要で、更に犯罪が増えるという悪循環に陥る。
大言壮語で壮大な夢を語り、貧困を外国人に責任転嫁するトランプ前大統領を熱狂的に支持する層は、案外このような地域の人々かもしれない。マーロンは狡猾な兄のケビンを信じ、罪をかぶって服役し、結局裏切られるのだが、この兄弟も親の庇護を受けられず、貧困な幼少期を送った結果精神が荒んでしまったのだろう。
日本でもいつか出現するのか置き去りの街
日本でも、ある自動車会社が「スマートシティ」という実験を始めている。ひとつのコミュニティを作り、24時間のセキュリティシステム、自動運転の車の利用など様々な実験が行われているらしいが、そこに住めるのはいわゆる富裕層だろう。
ただ、日本はアメリカと異なり鉄道網が張り巡らされていて、近頃は私鉄各社が相互乗り入れに取り組んでいる。地価の高い地域と鉄道で結ばれることにより、居住地の地価やイメージがアップするという現象があるので、すべての地域で分断が起きるかどうかはわからないが他人事ではないようにも思える。
得体の知れない慈善団体の詐欺にご用心
まるで日本のご祝儀泥棒や香典泥棒にも等しいケビンの寄付金ビジネスにはあきれるほかない。善意を食い物にして私服を肥やす最低の犯罪だが、残念ながらこの手の詐欺団体は多数存在し、ネット社会の現代はより巧妙な手口になっていると思われる。
つらい刑務所生活から帰ってきたマーロンにとって、何もかも荒れ果てた故郷や、信頼していた人間の裏切りは、耐え難かったのだろう。幕切れはあまりにも切ない。巨万の富もそうであるように、ゴルゴの銃弾は、怨恨の解消や危機回避など、不幸の解決にはなっても幸せを運んではくれないのである。
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野原 圭
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