この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第54巻収録。抜群の頭脳戦で穀物相場を操り米メジャーをきりきり舞いさせる商社マン・藤堂。しかし日本商社の進出を許さないメジャー4社は、ゴルゴを雇い藤堂の野望を打ち砕こうとする。穀物市場を解りやすく説明しているため、素人でも十分に楽しめる屈指の人気作。脚本:きむらはじめ
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人気キャラ・藤堂伍一が初登場
デイブ・マッカートニーやマンディ・ワシントンなどの名脇役と同じく、シリーズ屈指の人気を誇るキャラクター、それが今回登場する藤堂伍一だ。彼は日本の総合商社・丸菱物産で穀物市場を担当する企業戦士。本作は日本米の自給率をあげるため、米国メジャーが支配する穀物市場に切り込む藤堂の活躍を軸に展開していく。
藤堂は続編である『穀物戦争 蟷螂の斧 汚れた金』のほか、108巻『G資金異聞・潮流激る南沙』にも登場する。後者などは藤堂が出演しているから読んだという読者も多いのではなかろうか。

経済モノが苦手な方にも是非
『穀物戦争 蟷螂の斧』は日本の農業政策の問題点をテーマとした経済モノだ。平成・令和作品では珍しくない経済モノだが、本作が発表された1981年では異色のラインナップだった。「政治・経済の社会情勢はゴルゴ13で学ぶ」が当たり前となった昨今。本作はその礎を築いた記念碑的作品ともいえる。
また、経済モノと聞くと苦手意識をもつ読者もいるだろうが心配ご無用だ。序盤で藤堂と食料庁の堀田が、日米の農業政策についてのウンチクを語るが、私にはチンプンカンプンだった。それでも抜群に面白い。いままで政治・経済モノをスルーしてきた読者にこそ読んでほしい作品である。
もう一人の主役、ジェームス・ウノ
穀物戦争=藤堂伍一のイメージは強いが、もうひとり忘れてはならない登場人物がいる。藤堂の右腕として活躍する日系アメリカ人、ジェームス・ウノだ。ウノは藤堂と同じく剛柔流空手の達人である。1970年代に活躍したアクション俳優、ブロンソン・リーを彷彿とさせる風貌はハマリ役だった。
日系アメリカ人という設定もさすが。生粋のアメリカ人という設定では、読者の感情移入を獲得できなかっただろう。本作では藤堂の命をうけて、日本へ輸送中の小麦を狙う刺客たちと大立ち回りを演じる。ウノがいなければ『穀物戦争』がここまでの人気を獲得することはなかったに違いない。

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町田 きのこ

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