この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第8巻収録。管弦楽団の団員を装い諜報活動を行っていた二人のKGB諜報員・ボリスとモニカが、亡命を目的として突如失踪した。亡命を許さないKGBは、ゴルゴに二人の抹殺を依頼。しかし亡命を歓迎するCIAはあの手この手でゴルゴの追跡を妨害する……。
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シリーズ伝統の諜報アクション
推理サスペンス、ガン・アクション、お色気もある。『ゴルゴin砂嵐』『最後の間諜-虫-』『飢餓共和国』などの流れをくむ初期シリーズ伝統の諜報アクションだ。ゴルゴが逮捕・収監される場面や二重依頼の特殊なケースなど、伝統にプラスアルファが用意されているのが嬉しい。
初期作品では欠かせない存在だったゴルゴ・ガールには、CIAの女諜報員ステラ・オルストンが登場。彼女のようなイヌイットの血をひく黒髪美女は、「ゴルゴ13=金髪美女」のイメージが強いなかでは貴重な存在だ。ゴルゴの案内役として荒野に繰り出した際、その衣装がプレタポルテにハイヒールというのは場違い感満点だったが、直後のゴルゴとの情事を想定すれば正解だったのだろう。
70年代のゴルゴは謎だらけだった
『ゴルゴ13』の連載がビッグコミック誌上で開始されたのは1969年1月号からだ。そのひとつ前の号、つまり1968年12月号には新連載開始の予告カットが掲載されており、そこには「サーティーンとよばれる、ナゾの男が世界をまたにかけて大活躍するアクション・コミック」と記されている。
昨今のネット社会ではゴルゴの行動規範はすべてプロファイルされ、我々読者にも広く認識されている。しかしインターネットが存在しない1971年当時、デューク東郷はまだまだ謎に満ちたキャラクターであった。
本作『マニトバ』ではゴルゴの行動規範を伝説化させる興味深い考察が、ゴルゴを逮捕した刑事たちによってなされている。平成ゴルゴが入り口の読者は「なにを今さら」と感じるかもしれない。が、前述の時代背景を考慮して読み返せば一味違った作品として楽しめるはずだ。
ゴルゴが一般女性に手をあげた理由とは?
冒頭でゴルゴはキャサリン・スミスなる女性に手刀打ちを喰らわせている。あなたは「ゴルゴの後に立ったからだろう」と思われるかもしれない。しかし人ごみでごった返すオーケストラ会場である。ゴルゴの後を歩いた人間は一人だけではないはずだ。では、なぜ彼女だけが鉄拳制裁を受けなければいけなかったのか? この問いに対する刑事たちの考察が見事である。
いまや小学生でも知っている「俺のうしろに立つな」の代名詞だが、本作がその伝説化に拍車をかけたのは間違いないだろう。謎の男・デューク東郷の行動規範が徐々に明らかになっていく様は、本作最大のみどころといえるのではなかろうか。
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町田 きのこ
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