この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第28巻収録。スペイン政界の要人がつぎつぎと暗殺される事件が発生。遺体の首筋には針が刺さっており、犯人は同一人物と判断された。依頼をうけたゴルゴは犯人特定に動く。一方、スペイン諜報部のマリアは、流しのギター引きをしている父が、金の無心にやって来ることに頭を悩ませていた……。
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スペインの女性は情熱的だ
ベッドを共にした後、「喜びをこんな形でしか表せないなんて……」というマリアのセリフがある。喜びの表現が情事とは、ステレオタイプながらやはり情熱の国スペインと思ってしまう。ゴルゴの夜の技巧については言及がないが、コップの水を勢いよく飲んでいることから満足したのだろう。
その後に続く「わたしってやっぱりただの…………」の独白の続きも聞きたいものである。それにしてもこのシーンでゴルゴは煙草をふかしながらターゲットのことを考えているらしく、一言もしゃべらない。マリアのような女性を前に冷徹な仕事人間に徹するあたり、さすがはゴルゴである。
殺し屋は意外な人物
凄腕の殺し屋が意外な人物だ。伏線を張り巡らして読者をミスリードしていくストーリーではないが、キャラクターの落差で生み出す意外性にラストまで心地よく引っ張られる。意外な人物が殺し屋であるエピソードとしては『激怒の大地』『欧州再生 EU自動車戦争』『アイリッシュ・パディーズ』などがある。
それにしてもギターをかき鳴らしながら、仕込んだ針を放つエミリオと、その瞬時の”間”に殺し屋の正体を見出すゴルゴ。一流同士の心理戦と攻防は見応えがある。スペインの大地、真っ赤な夕陽、ギターを抱いて死んでいくジプシーに男の生きざまを見た。
世界が舞台:外浦吾郎(船戸与一)の脚本
脚本協力が外浦吾郎(直木賞作家の船戸与一)である。外浦吾郎は『アサシン暗殺教団』でトルコ、『チチカカ湖はどしゃぶり』でボリビア、『タントゥーラ~舞踏蜘蛛』でユーゴスラビアなど世界各地を舞台にゴルゴの脚本をものしている。その後、作家としても世界中を舞台に良質のエンタテイメントを生み出した。
今エピソードから漂ってくるジプシーの哀愁や実際に旋律が聞こえそうなフラメンコギターの描写は、船戸の盟友であり、同じく直木賞作家の”逢坂剛”(現代スペインミステリの大家)を彷彿とさせるのが興味深い。
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片山 恵右
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