この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第95巻収録。パブア・ニューギニアでの大規模な米作開発計画が持ち上がる日本政財界。その裏にはODA(政府開発援助)を見込んだ利権争いが繰り広げられていた。RMAは、この先も世界経済をリードし続けるためには、日本に米を輸入させなければならないと考え、パブア・ニューギニアでの米作開発計画の殲滅を計画する。
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新興国の悲哀を通じて日本の姿を炙り出す
名作『穀物戦争』と雰囲気の似ている本話だが、こちらは日本の議員や企業の黒い思惑によりスポットライトを当て、ODA(政府開発援助)に振り回されるパプア・ニューギニアの農民達の悲哀を色濃く描き出した一作となっている。
ニューギニアで若い娘の身売りを目の当たりにして憤慨する藤岡に対し、浜林老人が言う「日本でも、ほんの三十年前まで、東北の村々ではよくあるコトだった……」という台詞は、豊かさとは何なのかを改めて考えさせてくれる。本話から更に三十年近くが経った今、私達は新興国の人々に誇れる日本人になれているだろうか?
珍しく持論を述べて依頼人を驚かせるゴルゴ
依頼人のイデオロギーには深入りしないのが基本のゴルゴだが、本話の彼は珍しく、依頼人に向かって、アジア各国のコメ自給を潰すアメリカの農業輸出政策を批判する発言をしている。
依頼人のRMA理事長としても、ゴルゴがこんな発言をすることは相当意外だったのか、「!!」と驚いた上で「君に民権主義思想があろうとは、くくく……」と愉快そうにしているのが面白い。その上、「君は日本人の血を引いていたんだったね」という依頼人の一言を特に否定もしないゴルゴ。勿論依頼はこなすのだが、個人的には色々思うところがあったのかもしれない。
現地の迷信になぞらえて悪徳大臣を始末
常に合理性のみを重視するゴルゴは、迷信を畏れる素振りなど微塵も見せないが、迷信や風習を利用して相手を嵌めることは多い。今回の「ニューギニアで二度と再び開発話が起こらないようにする」というリクエストに対し、現地に伝わる「ニオコマドの呪い」になぞらえる形で標的を殺害してみせたのは、その最たる例と言えよう。
かくして、農民達を支配して美味い汁を吸おうと目論んでいた大臣が始末され、開発は白紙に戻るものの、藤岡と浜林老人は前向きに伝統農業を続けていくというラストは、重苦しい話の中に僅かな涼を差し込んでくれるようだ。
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東郷 嘉博
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