この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第105巻収録。スペインを訪れたゴルゴを狙った爆弾テロ事件が発生。重傷を負い現場から逃走したゴルゴだったが、記憶を失っていたというストーリー。街で偶然ゴルゴを助けた女性がゴルゴのサポート役に徹しながらバスクの街を奔走する逃避行がみどころ。記憶を取り戻すためにゴルゴがとった驚きの手段とは……?
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10年の時を経たお宝ロマンス
ゴルゴと女性の束の間のロマンスを描いたゴルゴ・ロマンス。初期の頃は頻繁に発表されていたが、1980~90年代に向かって諜報アクションやゴルゴの出生に秘密に迫るルーツ編が全盛期を迎えたため、ロマンス作品はめっきりと影を潜めていた。
1993年に発表された本作は時期的にいえば異色作ともいえる作品である。本作の前に発表された作品で特徴的なロマンスを含んだものは1983年の『女カメラマン・キム』であるから、じつに10年の隔たりを経て発表されたお宝ロマンスといえるわけだ。
構成としては初期のようにゴリゴリのロマンスものではなく、ゴルゴの記憶喪失というショッキングな要素を織り交ぜたロマンス・アクションだ。ドンパチを楽しみたい読者も納得できる一編といえるだろう。
彼女の名は……
今回ゴルゴの相手を務めるゴルゴ・ガールには名前がない(本記事ではジェイミーと呼ぼう)。古くは『白夜は愛のうめき』などでもゴルゴ・ガールには名前が与えられていない。ゴルゴ13シリーズならではの手法だが、不思議と彼女たちの面影が心に残る。
ジェイミーは大怪我を負って記憶を失ったゴルゴを自宅へ運び介抱する。彼女自身、武芸の達人らしい。ゴルゴの背後に立った刹那、飛んできた手刀打ちを避けるばかりか、それが日本の古武道の動きだと判別するあたりは相当の腕前だ。
武芸を嗜む女性がスカートを穿くことは稀だと思うが、何故かジェイミーはスカート姿で登場した。直後、ゴルゴの財布を狙ったチンピラに対しハイキック一閃、男性読者へのサービスカットとなっている。スカートを穿かせたワケはこれだったんですね。
解釈は読み手しだいでいい
ジェイミーはゴルゴに尽したあげく非業の死をとげる。ゴルゴが恩人の死を目の前にした場面はさいとう劇画の真骨頂だ。ゴルゴ・ロマンス好きの読者には最大のみどころだろう。
『各界著名人セレクション』で本作を推薦している作詞家の秋元康氏は、「ベタな演出はせず、ゴルゴの揺れがなんとなく表情で伺える程度のヒントに留めているところが素晴らしい」と語っている。読者はそれぞれ自分の中にゴルゴ像を持っているわけだから、あとは読者の創造力にゆだねる形でいいというわけだ。
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町田 きのこ
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