この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第35巻収録。大富豪ウォルターの妻・エリノアは、学生過激団体SDSの活動に傾倒した過去があり、SDSのリーダーだった男を愛していた。エリノアはウォルターの妻になってからも、SDSへの資金提供を続けていたため、警察からマークされてしまう。事業への悪影響を危惧したウォルターは、ゴルゴに特殊な狙撃を依頼する。
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ピリオドに始まりピリオドで終わる
ゴルゴと互角の腕をもつプロとの対決を描いた名作『落日の死影』で「ピン1本を撃つのも仕事になる」と、ゴルゴが語っているように、今回の依頼はイヤリングの狙撃である。『G線上の狙撃』など、人間より難易度が高い「物」がターゲットの作品を心待ちにしている読者も多いのではないかと思われる。
が、今回は狙撃技術より、複雑な政治的背景と、それに起因する陰謀に巻き込まれるゴルゴ、さらにピンチからの脱出がメインのストーリーである。ピリオドと同じ丸い形のイヤリングを小道具として象徴的に使い、物語を鮮やかに締めくくっている。
超一流は体型も心構えも共通する
『消えた原稿』のように横顔だけの登場ではなく、今回は最初から最後までゴルゴの動きや表情のバリエーションが豊富である。ところで、ゴルゴの全身シルエットは実在する人物を彷彿とさせる。投手と打者の二刀流で世界を沸かせ、雑誌TIMEの表紙も飾った野球の大谷翔平選手だ。
彼は男性モデルとして、補正いらずの完璧な体型をしているらしい。首から上は似ても似付かない2人だが、共通するのは超一流のプロとしての心構えだ。大谷は100%のパフォーマンスのために120%の準備をするという。この点はゴルゴも異論はないだろう。
一度で良いから助手席に乗ってみたい車
狙撃失敗の疑念、陰謀、行きずりの女とのかかわりなど、巧みなストーリーの他、最後にゴルゴが乗っていく車の描写がすばらしい。主役がかすんでしまうほど、文句なしの格好良さである。今回の依頼はイヤリングの狙撃によりピリオドを打った。
しかし、コンラッドは警察関係の受刑者として刑務所で地獄をみるだろうし、仮に恩赦で出所したとしてもゴルゴの銃弾が待っている。そしてウォルターは自分の依頼により最愛の妻を失ったという深い後悔の中で余生を送ることになる。ピリオドの向こうに広がるのは、薔薇色の風景ではなさそうである。
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野原 圭
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