この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第187巻収録。サンディエゴの見習い記者が書いた原稿を、議員秘書がスピーチ用に買い取りたいと打診してきた。断る記者に対して執拗に売却をせまる議員秘書。じつはこの原稿には恐るべき秘密が書かれていたのだった……。先に第608話『極北航路』を読んでおくのがオススメ。
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「事実は小説より奇なり」まさかの現実
学生時代は良いものである。交友関係や発想に利害がなく、自由で伸びやかな時期を謳歌できる。自由で純粋な精神が、物事の本質を読みとり、豊かな想像力で、時に興味深い仮説を立てる。
しかし、ジュリア・ロバーツ主演の映画『ペリカン文書』のように、それがあまりに鋭い部分を突き、時の政権や大企業にとって都合の悪いものであったなら、それを書いた者は命さえ狙われることになる。記者やジャーナリストは、場合によっては命がいくつあっても足りない職業であり『人形の家』に登場する梶本のような生き方をしたくなるのも理解できる。
誰がために情報機関は存在するのか
「誰がために鐘は鳴る」という映画のタイトルではないが、CIAをはじめ各国情報機関は一体誰のためにあるのだろうか。それは国家、国民の為に決まってるではないか、と答えが返ってきそうだが、ではなぜ自国民をこれほどひどい目に逢わせるのか。
『外交伝説の男』で、敏腕外交官桐島が、日本人でありながら中国側に利益を供与する黒幕となった最大の理由もここにある。さらに情報員にしてもジョン・ル・カレのスパイ小説によれば2重どころか3重スパイのレベルになると、どちら側のために働いているのかわからなくなることもあるという。
銃弾はペンより手っ取り早し、衝撃の結末
あまりに手っ取り早くわかりやすい報復に唖然とした。カリー嬢の父上は相当せっかちな人らしい。というより出版業界を知り尽くしているだけにペンでの報復の限界を身にしみて感じていたのかもしれない。気の毒なのはケイン青年であるが、自分の書いた原稿が、その後『極北航路』においてまさか現実味を帯びるとは想像もしなかっただろう。
ところで今回のゴルゴは、最後の1コマに横顔だけ、セリフ無しという出番の少なさだった。狙撃の難易度が「行きがけの駄賃」程度だったからにせよこれで主役を張ることができるのはこの男だけである。
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野原 圭
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