この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。精神疾患を患う兄を不適切な薬物治療によって亡くしたマリア。彼女は兄に処方を行った医師が、過去を偽り「オープンダイアローグ」なる、薬にたよらない治療法を推奨していることを知る。怒りに震えるマリアは、CIAの友人に接触するが……。脚本:香川まさひと
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医療関係者も注目する異色の組み合わせ
精神医療の新手法として近年注目される「オープンダイアローグ」を題材とする本話。脚本家・漫画原作者として知られる香川まさひと氏の脚本ということもあり、発表時には旧Twitterでも医療関係者を中心に大いに話題になったようだ。改めて、本作の取材対象の広さと、本作に関心を寄せる人の多さを実感させられる。
OD自体、医療関係者の間でも異例と言えるほど多くの人に関連書籍が読まれているテーマらしく、特に日本での関心は諸外国と比べても高いとのこと(※)。今後は一般の間でも「ゴルゴでODを知った」という声が多く聞かれるかもしれない。
ゴルゴに頼らず目的を果たしたマリア
兄を死に追いやった医師・シャールへの復讐を願い、CIAの友人を頼ってスナイパーに依頼しようとするマリア。結局、依頼は実現しなかったものの、彼女は持ち前の演技力でシャールを嵌め、謝罪を引き出すとともに失脚させることに成功する。
依頼人候補(?)が自力で問題を解決してしまう珍しいシナリオだが、終わってみれば相手はゴルゴに頼るまでもない小物だったということだろう。本話のラスト、ゴルゴによる姿を見せないODの意図は謎だが……。二人を調べた上での、自分に会う必要などないという警告、あるいは一種の労いだったのだろうか?
「モノローグの男」にODは必要なのか……
ゴルゴへの依頼が行われず、ゴルゴ自身も最後のコマまで姿を見せない異色の本話だが、そのかわりにCIAのジョンがゴルゴに関して興味深いことを語っている。常に孤独な「モノローグの男」であるゴルゴこそ、オープンダイアローグを必要としている人間なのではないかと。
ゴルゴの仕事に魅力を感じると同時に、どこか哀しみも感じるというジョーの言葉には、読者にも共感できる向きが多いかもしれない。最終回が金庫に眠っているというのは都市伝説だが、最後のその時、ゴルゴは恐らく独りだろう。その寂寥をも、彼は意に介さないのだろうが……。
※出典:BeyondHealth「WHOがグッドプラクティスと認める「オープンダイアローグ」は、日本の精神医療を変えるか?」(2021年10月1日)
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東郷 嘉博
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