この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第187巻収録。極地の氷が融け、新しい航路「極北航路」が出現する可能性が見えてきた。危険度の高い海峡や運河を回避できる極北航路を使い、日本の廃港寸前の港を世界のハブ港にする計画が日露共同で発動。しかし、これをよく思わないアメリカの思惑が交錯し……。脚本:ながいみちのり
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日本の敗戦、ソ連崩壊が生んだ悲話
ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストラヤンニの悲恋映画『ひまわり』を彷彿とさせる設定だが、実際このような選択をした日本人は、少なからず存在しただろう。そして、その血の絆が『消えた原稿』で幻となった「マリン・ニューディール計画」を現実化する原動力となる。
戦死したと思っていた父親が、ロシアで結婚し生涯を終えたこと、その父の忘れ形見との老境に入ってからの出会い、故郷の北海道・増毛への思い、これらの感情が起爆剤となり、代議士としての峯岸の野望に火をつけるのだが、あまりに悲しい結末を迎えることになる。
増毛町が育てた世界的名シェフ三国清三
冒頭、峯岸が荒涼とした海岸にたたずみ、かつての栄華に思いをはせているが、岸田首相もご愛用のフレンチレストラン、オテル・ドゥ・ミクニのオーナーシェフ三国清三氏は増毛の出身である。
日本のルーツをフレンチに昇華させ、世界にその名を知られる三国氏であるが、最近はホテルとタイアップして「江戸洋食」という新たな試みにも挑戦している。彼は中学卒業後、東京の住み込み先で初めて食べたハンバーグに感激し、料理の道に進むことになったという。増毛が経済的に繁栄していたら、名シェフは誕生しなかったと思うと少し複雑である。
生死を分けた一瞬の運と最後の言葉
今回は様々な策謀が絡むストーリーもさることながら、魅力的な作画にも注目したい。軽井沢と言えば別荘、別荘といえば軽井沢を連想するが、その軽井沢の広葉樹林やそれに囲まれた別荘の雰囲気が実にリアルだ。対してゴルゴとシェバーキンが対決する森はロシアの針葉樹林であり、その違いがとても丁寧に描かれている。
その森で息詰まる死闘が繰り広げられるが、シェバーキンはホームグラウンドであることに油断があったのかもしれない。峯島がシェバーキンに告げた事実と、シェバーキンがゴルゴについた嘘は多分同じ色をしているのだろう。
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野原 圭
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