この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第51巻収録。第34巻『五月闇』で、五郎蔵の働きにより兄弟分を失った盗賊・時雨の伝兵衛。その伝兵衛が五郎蔵に復讐するべく江戸へやってくる。五郎蔵は、伝兵衛が撒いたエサに食いつき一味に潜入。そのまま囚われの身となってしまう……。辰蔵の活躍も痛快に描かれた一編。
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昔の若造、今や頭
盗人酒屋の常連、峯吉と鉢合わせたおまさ、夫の五郎蔵と彦十にも引き合わせて昔話で盛り上がっている。どうやら江戸でのおつとめをするらしく、大滝の五郎蔵に助っ人を願い出る峯吉だが、何やら裏がありそうだ。
自らが頭である事を暗示し、おまさを引き込みに入れる手立てなども滞りが無い。密偵たちは盗賊の動きを知らせる為に火盗改メへと逐次報告をするのだが、何やら上手く出来過ぎているようだな。そう、何を隠そう盗賊たちの目当ては五郎蔵その人で、狗となった密偵たちを狙っているのであった。
鬼平犯科帳も話が進むにつれ、そろそろ誰が密偵であるか周知されてきた節がある。その流れから密偵を炙り出そうとするストーリーが多く出てきたな。密偵と盗賊の駆け引きが見もののストーリーだ。
地名と道路名
1659年に隅田川から人工運河が引かれて、水運の重要な位置づけを成したのだ。この運河の名前を堅川と言って、西は隅田川から東の旧中川まで流れる川だ。この堅川には江戸時代に橋が架かっていたのだが、隅田川から順番に一之橋、二之橋、三之橋、四之橋、五之橋、六之橋、と呼ばれた。
現在でもこの橋の名残は地名として残っていて、一之橋は両国の回向院裏の通りの名としても残っている。二之橋は清澄通り、三之橋は三つ目通り、四之橋は四ツ目通り、五之橋は明治通りと名前を変えて通りの名前で残っているのだ。六之橋は取り壊された後の跡地としてバス停に残っているぞ。
さて密偵たちが集まる店といえば、鬼平ファンにしてみれ“五鉄”の名前が挙がる事だろう。鬼平の作中では、二ツ目橋の五鉄という言い方で住所を伝えている事をしばしば見かけるな。
二ツ目橋は現在の清澄通りと述べたが、都営大江戸線の森下駅から清澄通りを両国駅方面に歩くと二之橋が現存するのだ。更に二之橋を渡った北詰にはなんと、軍鶏なべ屋五鉄なる立て札があるではないか。正式な跡地という訳ではないが、鬼平に所縁のある立て札を眺めるのも乙かもしれないぞ。
辰蔵の大活躍
誘惑に弱い辰蔵だが、悪事に対する嗅覚は鬼平譲りなのだろう。何やら怪しげな雰囲気を察知した事から、盗賊たちの動きが火盗改メに伝わる事となる。自ら先陣を切って盗賊宿を包囲、立ち回りをする辰蔵には惚れ惚れとしてしまう。
密偵や鬼平までもが盗賊の策によって騙されていたところ、辰蔵の機転によって万事解決に至るのだ。命を救われた五郎蔵からの謝意を受け、辰蔵も大きく成長するだろう。更なる辰蔵の成長も今後の楽しみだな。
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滝田 莞爾
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