この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第24巻収録。茶屋の女中の気を引くため、一句詠んだ同心・細川。そのことを浪人に茶化されたため喧嘩になったが、撃沈したうえに腰を痛めて職務不能に。一方、忠吾の妻・おたかの面倒をみている産婆・おたねが誘拐される事件が発生。容疑者は墓火の秀五郎の用心棒だった男で、細川を倒した男と同一人物だった……。
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忠吾、細川のおとぼけ活劇
鬼平率いる火盗改メ方、個性的な与力や同心たちにフォーカスを当てた作品が非常に多い。その中でも失敗してばかり、そのダメさが数多くのトラブルを生んでいる同心が木村忠吾と細川峯太郎だろう。
忠吾と細川は年齢も近く、妻は先輩同心の娘という共通点もあり、何かとライバル意識が強いようだ。まだまだ若く青い二人の同心コンビが織りなす、素っ頓狂だけれども、心温まる作品に仕上がっているぞ。
若い男性がゆえの情けないエピソードも満載、まさに鬼平犯科帳の世界を知るにはふさわしい作品ではなかろうか。
植木と園芸の街、染井
江戸時代には産婦人科医や助産師という区分けは特に存在せず、出産を見守って手助けするのは主に“産婆”の役割だった。忠吾の妻の出産に際しても、産婆のおたねが携わっているようだ。
おたねの旦那は植木職人との事で、大店や武家屋敷の庭の手入れを担当しているのか。今で言う共働きだな。さて植木といえば有名な地域があって、現在の豊島区駒込を中心に数多くの植木屋があったのだ。その中でも最も有名なのが染井という場所だろう。
日本人は昔から桜が大好きだな。上野公園の桜は今でも人気だし、奈良県の吉野も桜で有名だ。ソメイヨシノも有名な桜の種類だが、実は染井と吉野の名前を合わせて命名された品種だ。桜を眺める目も少し変わるかもしれないな。
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跡取りの誕生、おめでとうございます
盗賊と新参の植木屋との繋がりが明らかになってきて、徐々にエピソードがまとまっていく流れは素晴らしいな。鬼平による盗賊たちへの仕置きも見ものだし、細川に意趣返しをさせるあたりも人間らしさがあって良い感じだ。
さて、鬼平の活躍によって事件は一件落着となった訳だが、しっかりと物語の顛末も語られているぞ。子どもが生まれるという事は、非常に嬉しい事なのだろう。
悲しくて流す涙よりも、嬉しくて流す涙の方がきっと温かいはずだな。これからも若い同心には、たくさんの嬉し涙を流して欲しいと願ってしまうな。
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滝田 莞爾
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