この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第54巻収録。性欲過剰の新妻に辟易する毎日を送っている同心の三浦源太郎が登場。そのころ江戸では放火事件が連続発生。被害宅の共通点は、主人が婿養子であったことだった。ある晩、平蔵とともに見回りに出た三浦は、放火犯人を追跡し追い詰める。犯人はなんと……。
旦那の苦悩
同心、三浦源太郎は夜が怖いようだ。勤務外にも関わらず見回りをするとは仕事熱心にも思えるのだが、その実、夜の生活に対して悩みがある事が分かるのだ。妻を持ち、家族を作るという事は素敵な事なのだが、当人にしか分からない苦悩という物もあるのだろう。
幼馴染と共にちょっとした気分転換で軽い浮気行動をとった源太郎ではあるが、その出会いが彼にとってどのような変化をもたらすのか、その部分をしっかり読むと楽しめる作品になっているぞ。
江戸時代の肉食系女子
本作では芯の通った強い女性として、源太郎の妻が描かれている。昼間はキリっと真面目に、夜は性欲が旺盛であるという表現だな。現代においても性欲の話はされる事があるのだが、江戸時代でも女性の性欲について取り上げられる事があるのだ。
代表的な物としては陰間茶屋の話があるだろうか。陰間茶屋とは男性が体を売る茶屋の事をいうのだが、男性が男性を買うばかりではなく、女性が男性を買う側面もあった。このようにして江戸時代でも、女性が性欲を満たす社会構造はあったという話だ。
陰間茶屋は各地に点在いたが、最も有名な地域としては湯島界隈が挙げられるだろう。現在その名残は一切ないのだが、湯島から池之端にかけての界隈は性欲が旺盛な方にも人気だったのかもしれないな。
同心としての適格
強い妻に関するストーリーとして捉えられる事が多いかもしれないのだが、本作の主題としては、同心たるもの任務を遂行する事が重要であるという点ではないだろうか。
同心の源太郎は幼馴染という理由から、犯行現場を抑える事を躊躇った。これは同心としての心構えがなっていなかったという他ない。その心構えに対して、様々な背景があったという部分が主眼だと思うのだ。故に鬼平は源太郎を解任するなどの強い措置を取らず、源太郎の第二の人生を応援している訳だ。
仮に源太郎に責めを負わせて切腹沙汰などとなった場合には、とてもストーリーとしては成り立たないので、本作はしっかりとハッピーエンドに収まった点が素晴らしいと思うぞ。
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滝田 莞爾
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