この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第19巻収録。火盗改方の同心・田中貞四郎が放火犯を捕縛する手柄をたてた。犯人は菓子屋の下男・亀吉。しかし、密偵・粂八が近所から聞いた話では、亀吉は放火などする人間ではないという。じつは亀吉を最初に捕らえたのは田中ではなかったことが判明し……。
スポンサーリンク
火付けは晒しの上、火炙りの刑
鬼平は“火付け盗賊改め方”の長官だ。これを略して火盗改メと呼ぶのだが、鬼平犯科帳では盗賊を捕縛するストーリーが多い。もちろん火付け(放火)を題材に扱った『火つけ船頭』『谷中・首ふり坂』などの作品もあるぞ。
本作も火付けのストーリーなのだが火付けや盗みといった犯罪行為よりも、人が生きる上で大切な事にフォーカスが当てられている。旗本も夜鷹も同じ人間ではないか。長谷川平蔵の心にある、大切な物を改めて認識させてくれる作品だ。
ハンディキャップを負った人
世には様々なハンディキャップを負った人がいる。亀吉の場合には他の人と比べて、上手く自分を表現したり、他人の気持ちを汲み取る事が苦手だったのかもしれない。自らの功績や名誉のために誰かを利用するなんて事は珍しくもないが、こと刑事側の役人がこれをしてしまえば即ち冤罪の発生だ。
うまく釈明のできない亀吉のハンディキャップを逆手に取って放火犯に仕立てるとは言語道断。一時的に名声が上がったとしても、結局は信用も地位も全てを失う事になるのではないかな。それでも弱者を食い物にして、自らを良く見せようとしてしまうのが人間かもしれない。ぜひ我々だけでもそうならぬよう、心に正義を忘れないようにしたいものだ。
他人を馬鹿にする事は誰でも出来る
夜鷹であろうが鈍牛であろうが同じ人間、一生懸命努力する姿は尊い物。身分や立場を笠に相手を見下しているようでは、鬼平のような立派な精神は養えないのだ。若さ故に悪行もあっただろう。誰かを傷つけた事もあるだろう。酷い遊びもしただろう。
それでも鬼平は崇高な精神を持つ事が出来た。剣術を以てして培った精神だろうか。例えフィクション作品であろうとも、我々が生きる上での大切な事を学ぶ事は出来るのだ。現代の我々が必要な事を、鬼平は伝えようとしているのかもしれないな。
この作品が読める書籍はこちら
滝田 莞爾
最新記事 by 滝田 莞爾 (全て見る)
- 鬼平犯科帳 漫画:第265話『同門の宴』のみどころ - 2022年9月9日
- 鬼平犯科帳 漫画:第48話『おしま金三郎』のみどころ - 2022年9月5日
- 鬼平犯科帳 漫画:第67話『殺しの波紋』のみどころ - 2022年9月1日