この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第26巻収録。火盗改方の役所で放火による火災が発生。消化活動のどさくさに紛れて、投獄中の犬神の権三が脱獄した。火盗改方からの火災という屈辱に、怒り心頭の平蔵。火盗改方の威信をかけた捜査がはじまるが、脱獄当時、牢屋には密偵の仁三郎がいたという証言が飛び出し……。
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密偵はやはり盗賊なのか
二人組で市中の見廻りをする事が多い鬼平犯科帳の世界だが、今回のコンビは非常に珍しい組み合わせだ。筆頭与力の佐嶋と同心の忠吾の二人が見廻りをしている。佐嶋の過去の因縁から街中で盗賊を捕縛するものの、忠吾は盗賊の連れを逃すという失態だ。
さらに失態を重ねて、なんと拷問部屋に納められている盗賊を逃がすという大失態を犯す。さすがに弁解の余地は無い状況にも関わらず、拷問部屋に密偵の仁三郎がいた事を自らの言い訳に繕おうとする忠吾。つまり仁三郎が手引きをして盗賊を逃がしたという言い分だ。火盗改メに広がる仁三郎への不信感。果たして仁三郎が本当に手引きをしたのだろうか。
傘を張る浪人
傘問屋が舞台となったストーリーだ。傘といえば、時代劇などで武士が傘を貼る内職を行っている描写を見た事はあるだろうか。イメージ的に傘問屋から仕事を請けていたようにも思えるのだが、実際は少し異なったようだぞ。
破れてしまった傘の骨組みだけを仕入れて、更に油紙を仕入れ、そして修復していたという言い方が近いかもしれない。つまり傘のリサイクルだな。江戸時代には既に様々な物がリサイクルされていたという。使い捨ての時代となった現代だが、江戸時代に学ぶ事もたくさんありそうだ。
明かされる仁三郎の過去
本作では仁三郎が現在に至るまでの経緯が全て描かれている。仁三郎ファンには堪らない作品ではないだろうか。そうして仁三郎と犬神の権三郎との間柄、そして確執が明らかになっていく。
権三郎は確かに盗賊だが、心の奥底までは悪に染まっていなかったようだ。徐々に仁三郎の過去と現在が繋がっていくストーリー展開は見ものだな。真の悪はどこの誰なのか。心に秘めた悪を炙り出す、鬼平の辣腕が光るぞ。
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滝田 莞爾

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