この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第51巻収録。非番の日、同心の小柳は、お園とともにお花見に繰り出した。しかし花見会場で、お園が行方不明になってしまう。平蔵と忠吾も駆けつけ調査したところ、お園は花見会場で掏り師を発見し、そのまま尾行したことが判明した……。人身売買を行う女賊・おまきが登場。
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鬼平の妹
本作はお園が主人公となってストーリーが展開していくぞ。お園の初登場は『隠し子』だ。平蔵の腹違いの妹としてお園は、居酒屋を営む男勝りの強い性格の女性として描かれている。
『隠し子』の続編『炎の色』も、お園の登場するエピソードとなっているので、お園と小柳が好きなファンの方は必見だろう。本作ではその気の強さから事件に巻き込まれてしまうお園なのだが、悪を見逃せない正義の心は父譲りであろうか。
鬼平シリーズの傾向からすると与力や同心はもちろん、その家族にまで累が及ぶ事を危惧して、役人の身内である事を公にする事はないように思えるのだ。その点でお園は自らの亭主が同心である事を明かしており、この部分は若干浅はかだったかもしれないな。
猟奇的な性格
物語の悪役はかなり猟奇的な女性が登場する。今の言葉でいうならばサイコパスと呼ばれる物に近いのかもしれないな。しかしながらその猟奇的な性格をストーリーの中で表現するには、ページ数が少なかったようにも思えるのだ。
作られたキャラクター性を読者に認識してもらう部分が少ない為に、悪者同士の仲間割れエピソードなども若干違和感がある。その部分が個人的には残念ではあるが、まぁこれ以上にページを割いてしまうと不気味さが際立ってしまうので、キャラ付けとしては妥当なのかもしれないな。
投擲武器としての刀
悪役捕縛の際に、本作では派手なアクション描写が登場するぞ。悪行に至る寸前で鬼平たちに現場を抑えられた悪役が正義の斬撃を食らって行く様は、まさに爽快の一言に尽きるだろう。さて、そのシーンの中で小柳が刀を投げて、悪者の腕に突き刺さるといった描写がある。
悪者が刃物でお園を傷つけようとした場面での事、小柳の一撃でお園は窮地を脱するのだ。しかし物語を読んでいて、あれっ?と思う事があった。日本刀を投げて相手に刺すなんて事が出来るのだろうかと。この部分を少し調べたところ、実際に脇差などを相手に向かって投げて突き刺す事があったらしいのだ。
主に二刀流で用いる事が多い技との事だが、そういった武術の考察もしっかりとなされている事が分かって嬉しい限りだぞ。爽快なアクションシーンが見ものの本作だ。小柳ファンだけではなく、アクション好きな方にもお勧めの一本になっているぞ。
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滝田 莞爾

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