この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第9巻収録。盗賊・霰の小助一味が平蔵殺害を計画。平蔵配下の料理人・勘助を罠にはめ、妻のおたみを誘拐する。目的は平蔵の膳に毒を盛らせることだった!左馬之助とお静、五郎蔵とおまさがこの回で婚礼をあげる。
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人間の弱さを認め、許す存在
長谷川宅の料理人を勤める勘助という若者が霞の小助という急ぎ盗の盗賊に利用されてしまう。平蔵は自分自身が若かりし頃一帯に名をとどろかせるほどの不良だったからか、人生につまずいた若者への目が温かい。
この勘助も人は良いものの博打好きで、勤めている店の金に手を付けたという理由で2度も店を辞めさせられている。本気で惚れた女性ができたがために以前勤めていた店に頭を下げに来るが、当然返事は芳しくない。
それをたまたま事情を知った平蔵が「女房のために真面目になるだろう」と見込みだけで役宅で雇う。これは並大抵の精神ではできない。
劇画版だからこそのコミカルなシーン
この白い粉、個人的な感想になるが劇画版の方が面白いと思っている。この回は左馬之助の婚儀の場面で始まる。仲人を努める平蔵が謡を歌うが、列席者が肩を震わせ、天は二物を与えないと笑いながらささやくほどの腕前だ。
そこに飼い犬のクマが遠吠えを合わせてくる。この時の遠吠えがさいとう作品ではおなじみの書き文字で書かれるが、下手な謡と合わさった様子が目に浮かぶようなのだ。
平蔵が下手ながらも懸命に謡を歌っている同じコマにあの書き文字で犬の遠吠えが書かれれば笑わずにはいられない。終わりまで読むと人の切なさ、人の弱さが描かれたしみじみとした回なのだが、最初のコミカルさが印象に残る。
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ページを大胆に使った殺陣
さいとう氏の作品は鬼平犯科帳にせよゴルゴにせよコマあたりの情報量が多いという特徴がある。絵は緻密で吹き出しのなかもセリフがびっしりというのも珍しくない。
しかもそのコマが割合小さめで、字の通り映画のフィルムのような印象も受ける。しかしこの回では平蔵が三人の悪党から一気に襲われる殺陣の締め、平蔵が三人を一度に切り捨てる瞬間が1ページぶちぬきで描かれるという大胆な構成になっている。
このページは平蔵の気迫がそのまま写し取られたような、すさまじい迫力が伝わってくる。引き延ばしてポスターにでもしたいほどだ。大胆なコマ割りで見せ場を描かれると話自体の魅力がひときわ際立つように思える。
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大科 友美
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