この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第152巻収録。統一へむけて、東西ドイツの高官やインテリ層で構成された秘密結社「真のベルリン市民」。西側の細菌学者オットーは、東側の旧友の誘いで結社に参加する。しかし、野望達成のため細菌テロまで計画している結社の現状に疑問を感じたオットーは、テロの阻止と黒幕の抹殺をゴルゴに依頼する。脚本:江戸川啓視
スポンサーリンク
物理的ではないミラクルショット
ゴルゴ13は常人では成しえない狙撃を成功させる、類稀なスナイパーだ。多くのエピソードでは何らかの理由で銃弾の届かない場所への狙撃を行う。
しかしこの『真のベルリン市民』では、20年越しの依頼という、時間的な面で常人では成しえない狙撃を行った。しかも20年目の狙撃は絶対に、ではなく条件付きでの狙撃実行だ。こんな依頼を叶えられるのはゴルゴ以外にいないだろう。
ミステリー、郷愁風味
本作はゴルゴへの依頼者と依頼内容を含めて過去の真相を探っていく、ミステリー仕立てのシナリオになっている。さらにそこへ二人の男の少年時代から青年時代、現在、あるいはその子どもに至るまでが描かれているためか、どこかノスタルジーを感じるシナリオだ。
ゴルゴ13で描かれる人間ドラマというと、家族間の情や確執が多いように思う。しかし、友情…特にこの【真のベルリン市民】のような男同士の友情と顛末を扱ったエピソードもストーリーに厚みがある物が多い。
劇画で描かれる喜びの一瞬
ラストで明かされる、依頼人の最期の姿は胸を打つものがある。依頼人はゴルゴへ依頼している以上、親友の裏切りを既に知っていたはずだ。それでも笑顔でつるはしを振り上げてみせるのだ。
親友に裏切られていようとも、親友と共に見た大きな夢を叶える瞬間の笑顔。さいとう氏の硬派なタッチだからこそ、この笑顔が際立って美しく、印象に残るのではないか。
この作品が読める書籍はこちら
大科 友美
最新記事 by 大科 友美 (全て見る)
- ゴルゴ13:第435話『地上の太陽』のみどころ - 2024年7月28日
- ゴルゴ13:第429話『真のベルリン市民』のみどころ - 2024年7月21日
- ゴルゴ13:増刊第73話『ピンヘッド・シュート』のみどころ - 2024年4月24日