この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第127巻収録。ロシアと手を結び、アジア一の武器商人として君臨したいサハム。彼はアメリカから武器供給を断られたインドネシアに目をつけ、自動車工場を装った巨大な武器製造工場を築き上げる。ここで作られた武器が東ティモール弾圧に使われることを危惧したバロ司教は、工場の壊滅を依頼。しかし、そこには“ある条件”が……。脚本:氷室勲
スポンサーリンク
東ティモールの独立に尽力した聖職者
東ティモールの独立運動を題材とする本話。現実にも、1996年のノーベル平和賞は、後に同国の首相・大統領となるホルタ氏と、ティモール人民の人権擁護活動に尽力したベロ司教(本作ではバロ司教)に贈られている。
賞金の740万スウェーデン・クローナは、日本円で約1億2千万円。それを躊躇いなくゴルゴに差し出し、サハムの野望の阻止を依頼するバロ司教は、まさしく有徳の士といえる。本話の発表当時はインドネシア当局からの激しい弾圧が続いていた東ティモールだが、その後、2002年に独立を達成。21世紀最初の独立国となった。

ゴルゴも認めたメークアップ・アーチスト
任務に応じて様々な変装をこなすゴルゴだが、今回は一風変わった作戦を取っている。ハリウッドから凄腕のメークアップ・アーチストを呼び寄せ、自分とわからないように顔を変えさせるのだ。標的側に顔が割れていることを察し、普段より念入りに偽装を施したということだろう。
実際、護衛がゴルゴの顔写真を入手している描写もあり、彼の読みは正しかったといえる。なお、アーチストのトマス・フィールは、後に『リプレイ』『デリートG Gの消去』にも登場している。本話では変装を見破られたものの、その腕はゴルゴに高く評価されたらしい。
偽装工場を逆手に取って武器を現地調達
台湾の技術者を装い、標的の工場に潜入するゴルゴ。飛び散った部品で頬に傷を負い、変装を見破られるのは彼らしくないが、そんな窮地をものともしない逆転を見せる。ここが自動車工場に偽装した武器工場であることを見破っていた彼は、ラインから調達した部品で拳銃を組み立て、巧みに標的を始末してしまうのだ。
さらに、「俺が請け負った仕事の中に、お前の命を奪う事は含まれていない。だが、俺の聞くことに答えない、と言うのなら話は別だ!」とコズロフを脅しつけて武器庫に案内させ、工場の爆破も鮮やかに遂行。対応力が光るミッションだった。

この作品が読める書籍はこちら

東郷 嘉博

最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日