この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第113巻収録。ロシアン・マフィアのグラチョフは、天才数学者のスミルノフと結託して世界的マネーロンダリングを計画する。一方、スイスの個人銀行副頭取・ランベルトは、麻薬を使用した上に車で人を轢き殺してしまう。グラチョフはランベルトをスキャンダルで脅し、資金洗浄に協力させようと企図する。
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不景気に繰り返す円高の波
不景気になると強い通貨にお金が集中して通貨高になる。例えばアメリカドル、ユーロ、スイスフラン、そして日本円だ。変動相場制になって以降、1995年と2011年に大きく円高に動いている。
本作が発表されたのは1995年6月。その2か月前に起きた急激な円高の陰にロシアンマフィアの、そしてゴルゴの暗躍があったとするのが本作の展開だ。実際の需要を越えたヘッジファンドなどの取引は、一旦情勢が傾くと急激に加速する。ゴルゴが放った2発の銃弾はターゲットこそ殺したものの世界各国が砂上に築いた帝国の崩壊を止めるには至らなかった。
ゴルゴに肉薄する捜査官
本作でゴルゴやグラチョフを追うのがスイス連邦警察庁のマイヤー捜査官。女性相手の寝技もいとわない大胆さも併せ持つマイヤーだが、ようやく追い詰めたグラチョフを目の前で狙撃されてしまう。
飛行機内でゴルゴを見かけてグラチョフ暗殺の犯人と確信したマイヤーは、「貴様の目的は知らないが……グラチョフの時のように、俺の邪魔だけはするなっ」と冷や汗をかきつつゴルゴに警告する。『円卓の騎士団』でもスコットランドヤートのケンドリック刑事が冷や汗をかきながらゴルゴに対峙している。こうした気骨ある人間が現場を支えているのだろう。
ゴルゴが作ったハイボール
元KGB大佐のグラチョフは盗品売買や拳銃密売などで1億ドルも貯めたというから大したものだ。その後に元ソビエト科学アカデミーの天才スミルノフを勧誘してブラックマネーのロンダリングを進めていく。またクルーズ船でボーイとなって潜入しているゴルゴに目を付けてハイボールを作らせるなど嗅覚も優れていたことが分かる。
そんなグラチョフもスミルノフの暴走やスイス銀行の脅威には気づかなかった。もう少し慎重に行動していれば、グラチョフ帝国が生き残る道があったのかもしれない。ところでゴルゴが作ったハイボールは美味かったのだろうか。
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研 修治
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