この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第76巻収録。敏腕記者マーチンは上層部からNI社についての調査を命じられる。明らかになったのはNI社と王室関係者・アサートン伯爵との裏取引だった。NI社はこの情報を公表しようとするマーチンの懐柔作戦に動き出すが、その現場ではまさかの……?
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利害が相反しないのを確認して依頼を遂行
本話は、一話の中でゴルゴの依頼遂行が都合3度も描かれるという贅沢なエピソードだ。冒頭のモザンビーク大統領暗殺は話のきっかけに過ぎないが、エピソードの本筋部分では、「交差依頼」とでも言うべき2件の暗殺がドラマチックに展開する。
特筆すべきは労組委員長・オドーネルの暗殺を依頼されるシーンで、ゴルゴがこれは同席の三人の共同依頼なのかと確認している点だ。実はその三人の内の一人が既に別件で標的となっていたため、依頼人同士の利害が相反しないように確認したわけである。依頼に対するゴルゴのスタンスがよくわかる一幕だ。
30余年前は王者の一角だったロイター
ロイター通信といえば、本話が発表された1987年の時点では世界の五大通信社の一つに数えられ、作中でも誇りある新聞社として描写されていた。だが、そんなロイターも2007年にはカナダのトムソン社に買収され、その後は業績不振から大規模なリストラも決行されているという。
諸行無常というべきか、世の移り変わりの早さを感じさせる。本話の主役といえるマーチンはかなり有能な記者で、さらに引き抜きにも応じないなど愛社精神の強い人物だったが、彼がその後も現役だったとしたら、様変わりするロイターに何を思っただろうか……。
在りし日のダイアナ妃の名前も……
イギリスのマスコミと王室は切っても切れない仲。本話でも王室情報のリークがテーマとなっており、実在の王族の話題も会話の中に登場する。ウィリアム王子が幼稚園児というのも時代を感じさせるが、やはり注目したいのはダイアナ妃。
本話では、彼女が自身を指して言った「おバカさん発言」が取り上げられている。この頃の彼女は既にチャールズ皇太子との仲は冷え切っていたというが、まだまだ平和な文脈で名前が出る存在だったことがわかる。皇太子と離婚した彼女がパパラッチに追われて悲劇の死を遂げるのは、本話の発表から丁度10年後だ。
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東郷 嘉博
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