この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第22巻収録。前話『逃げた妻』の続編。前話で姿をくらませた藤田が江戸に舞い戻る。以前同様、大店の和泉屋に出入りする藤田。一方、藤田の身辺をうろつく隻眼の男の正体は? まもなく父親になる忠吾が大いに学んだ、男と女の本質に迫るエピソード。
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それなりの立場にある男女の恋
木村忠吾が主役の本作、飲み仲間の藤田彦七が巻き込まれたトラブルを巡るストーリーとなっている。本作は『逃げた妻』からの続編にあたるので、より楽しみたい場合には前作から読んでおくと良いかもしれないな。
さて、家族を捨てて逃げた前妻とのヨリを戻すため、妻と娘を捨ててまで逃げ出した藤田。またもや江戸に戻ってきたようで、残念ながら前妻には再度逃げられたとの事。その藤田がまたもや江戸に戻ってきた。残念ながら前妻には再度逃げられたとの事だ。いかに美人妻といえども、見込みのない恋は止めるべきと周りのみんなは諫めたのだがな。
ところが話が進むにつれ、藤田はどうやら悪事に巻き込まれた様子が見えてくるぞ。悪党どもは、藤田が出入りしている柳橋の大店を狙っているようで。さて鬼平の手腕は藤田と前妻を救う事が出来るのだろうか。
江戸有数の花街、柳橋
同心たちが見張り所を設けた場所は柳橋の北詰、あつらえたかのような貸座敷だ。さてここで登場する“貸座敷”だが、江戸時代には男女が密会をする部屋を示していた。
ところが明治以降になると意味合いが変化して、女郎屋を示す言葉となったのだ。確かにどちらも男女が交わる場所という意味では違わないのだが、質としては大きく異なったようだな。
柳橋といえば江戸時代においても有数の花街で、抱えていた芸妓の数も非常に多かったそうな。今では僅かな名残があるのみだが、当時の賑わいを思い起こして歩いてみるのも楽しいだろう。
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やはり燃え上がった恋の炎
作中では分りにくい描写ではあったが、要は悪党どもは藤田を引き込みとして利用すべく、前妻を人質に取ったという事だ。せっかく忠吾が相談相手となってくれていたにも関わらず、自分一人で思い詰めてしまうとは何事だろうか。
挙句の果てに全てを無に帰そうと、悲観の道を選ぶとは救いようがない……。恋の炎と共に破滅するのは仕方ないとしても、残された娘の事は頭をよぎらなかったのか。
逆にそれだけ一途で真面目だからこそ、そうした破滅的思考に至ったのかもしれないな。鬼平曰く魔性に酔わされたとの事だが、やはり同じ男性としては情けない思いでいっぱいなのだ。
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滝田 莞爾
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