この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第77巻収録。イスラエルの核保有をめぐり、イスラエルのリクード将軍とアメリカ国防総省のドースン副長官の間で裏取引が交わされた。それは平和協定の条文を二重の意味に解釈できるよう巧妙に細工をし、結果的にイスラエルが核兵器を増強できるというトリックだった……。脚本:熊坂俊太郎
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コンマ一つで文意が変わるトリックとは?
平和協定の条文にコンマを一つ加えることで、「核保有禁止」を真逆の「容認」にしてしまうという驚きの陰謀が描かれる本話。作中で具体的な英文は示されていないが、恐らくこれは「オックスフォード・コンマ」の有無で文意が変わることを利用したものだろう。
この有名な画像(※1)で示されるように、コンマの有無で「ストリッパーとJFKとスターリン」が「ストリッパーであるJFKとスターリン」になってしまうのだから大変だ。ちなみに、2017年には、アメリカで条文のコンマの有無を焦点とする裁判があり、文法オタクの注目を集めたこともあった(※2)。
※1 https://languagelog.ldc.upenn.edu/nll/?p=3438
※2 NewSphere『 法律にコンマがなくて勝訴、残業認められる! 英語圏注目「オックスフォード・コンマ」裁判』2017年3月22日
俳優出身を揶揄されるレーガン大統領
実在の要人も時折登場する『ゴルゴ13』。時のアメリカ大統領・レーガン(任期1981年~1989年)もその常連であり、『カオスの帝国』ではかつての暗殺未遂事件が話のトリガーとなったり、『ロックフォードの野望』ではゴルゴを直々に電話で制止しようとするもスルーされるなど、何度も印象的な登場をしている。
そのレーガンだが、作中では俳優出身を揶揄されることが多く、本話でも「俳優あがりの大統領なら(条文のトリックに気付かないのは)なおさらだ!」と裏で小馬鹿にされている。当時の空気感がライトに伝わる面白いシーンだ。
焦点のコンマを狙撃する超絶スナイプ
本話のクライマックスでは、ターゲットを射殺する直前に、協定書から問題のコンマだけを正確に撃ち抜くというゴルゴの超絶スナイプが炸裂する。極小の標的を狙撃するエピソードには、揺れる船上の人物のイヤリングだけを撃ち抜く『ピリオドの向こう』や、演奏中のバイオリンのG線だけを破壊する『G線上の狙撃』などがある。
本話の狙撃はその技巧もさることながら、依頼人も気付いていなかった条文のトリックをゴルゴはしっかり見破っていたという点も凄い。世界中の言語にも精通するゴルゴにとっては、そのくらいは朝飯前だったか。
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東郷 嘉博
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