この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第88巻収録。崩壊寸前のチャウシェスク政権。反政府グループは大統領夫妻が影武者をつかって体制を維持しようとする計画をキャッチする。ゴルゴに協力を求めたグループは影武者の正体を探るため、スパイを潜り込ませ情報を収集する。影武者の意外な正体とは……?
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激動の年、1989年
六日間革命=ルーマニア革命(政変)の起きた1989年12月。前月の11月にはベルリンの壁崩壊があり、東西冷戦の構図がドミノ倒しのようにばたばたと音を立てて崩れていった激動の年であった。なお、ルーマニア革命によってルーマニア秘密警察(セキュリターテ)に保管していた東ドイツの極秘書類の移送が行われた。
それを端緒にする『東ドイツの残骸』というエピソードもあるので、興味のある向きは一読をお勧めする。この年、日本では年初に平成の御代に代わり、日経平均株価が4万円に迫るなどバブル崩壊前の経済絶頂期であったことが思い出される。
セキュリターテの筋金はいずこ
アナは恋人イオンに「私には、セキュリターテが鍛えてくれた“筋金”が入っているわ!」と言っているのに、必然性が薄いにもかかわらずホテルでゴルゴに体を差し出している。しかも依頼変更にかこつけてはいるが、組織の命令ではなく個人の意思でだ。
ゴルゴとアナが行動する間に、アナがゴルゴに劣情を抱くきっかけになるような出来事は起こっていないので、セキュリターテの筋金がどこへ行ってしまったのかまったくもって不思議である。そしてイオンが不憫でならない。激動の6日間ののち、イオンとアナが無事によりを戻したのかどうか気になるところだ。
影武者を見抜く千里眼
独裁者や大物政治家には影武者がつきもので、それをテーマにしたエピソードが多数ある。『顔のない男』ではリビアのカダフィー大佐、『アルヘンチーノ・ティグレ』ではペロン元アルゼンチン大統領、毛色が違うが『ズドロナス・マリヨ』ではローマ教皇も影武者が登場する。
『真実の瞬間』ではしらふの時に挙げる手の左右差でソ連の大物政治家クレメールを影武者か本人か見分けているが、本作でも影武者がいること情報を前提に話が進んでおり、ターゲットの少しの違いで影武者であることを見抜く千里眼がゴルゴには備わっている。
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片山 恵右
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