この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第48巻収録。次期アメリカ大統領をかけて争う、南部諸州のカーター陣営と東部支配階級のケネディ陣営。ケネディ陣営はカーター陣営の選挙戦参謀マーカス・ガボンの暗殺をゴルゴに依頼。同じくカーター陣営もケネディ陣営の参謀ヘンリー・バーナードの暗殺をゴルゴに依頼する。しかし、ある弁護士の密告で両陣営ともに目的達成後にはゴルゴを殺害する計画があることが発覚する……。脚本:外浦吾郎
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アメリカにおける北部と南部との対立
4年に一度行われるアメリカ大統領選挙。ゴルゴシリーズでも『偽りの星条旗』『神に贈られし物』『ルーサー・キングの遺産』などテーマや舞台を変えて何度も取り上げられている。本作ではアメリカ国内における北部と南部の対立がテーマとなっており作中には、
「大統領が民主党や共和党かという事はほとんど問題ではない」「問題は東部エスタブリッシュメントの利益代表か……それとも南部諸州の利益代表かという点でしかない!」と言い切る男が登場する。本作が掲載された1980年はそんなものだったのだろうか。そして現在はどうなのか。
2つの依頼を同時に受けるゴルゴ
ゴルゴのルールの1つとして、『カオスの帝国』のように同じ依頼を複数から受けないというものがある。その一方で『ラスト・ゴーギャン』のように、異なる依頼であれば同時に遂行することもある。
今回のゴルゴは二人の依頼人から互いに相手を殺すよう依頼されている。通常では成立し無さそうな内容ながら、どちらも殺す日時を先延べして指定したことで2つの依頼が成立している。「余計なことをしたな」と思うものの、話中では日時を指定した意味をしっかり説明している。この辺りは、「さいとう先生もぬかりないな」と思ってしまう。
アメリカ大統領選挙の皮肉な結果
珍しいことに、本作ではゴルゴが狙撃を失敗するシーンを描いている。ターゲットを狙うにはかなりの遠距離、しかも池に体半分沈めての狙撃は困難に違いない。それでもゴルゴファンであれば外すとは考えられないだろう。が、この時のゴルゴは失敗している。
ただし、当初の依頼内容を守るためにゴルゴが意図的に狙撃を外したことが伺える流れとなっており、その後は依頼内容を守って二人の依頼人をほぼ同時に殺している。なお、1980年の大統領選挙では共和党のレーガン大統領が勝利した。民主党の面々が苦渋を飲まされたことになっているのは皮肉だ。
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研 修治
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