この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第185巻収録。スイスの銀行頭取が「黒い小さな物体」に襲われ変死するという怪事件が連続発生。時を同じくしてゴルゴがスイスに入国する。はたしてゴルゴが怪事件に関わっているのか……? 165巻『螺旋』、168巻『ドナウ・ライン迷路』でゴルゴと対決したジャヌー警部が再登場。
スポンサーリンク
ジャヌー警部3度目の邂逅でゴルゴ逮捕なるか
『ドナウ・ライン迷路』での攻防で、ゴルゴを取り逃がしたスイス警察の敏腕警部ジャヌー。3度ゴルゴとあいまみえた今回、彼が果たしてどこまでゴルゴを追いつめるのかが最大のみどころだ。彼らの対決は池波正太郎氏の『雲霧仁左衛門』に登場する盗賊・雲霧仁左衛門と盗賊改め方安部式部の、追いつ追われつの関係を思い出させる。
雄大なアルプスを舞台に、いつもながらの精緻な推理で、不審な事件の真相に迫るジャヌーをはじめ、スイス銀行内部のあこぎな事情や、マニアックなメカニズムの解説を交えた、実に読み応えのある内容である。
なんとスイスに日本製タケコプター?登場
一番驚いたのは、ゴルゴが動く標的を狙撃するシーンである。ドローンと思われる日本人開発の小型飛行物体を利用して狙撃する場面では、何となくドラえもんの「タケコプター」を想像してしまった。今では実際に空中タクシーとしての実用化も夢ではなくなったが、当時としてはかなり斬新な着想だったといえよう。
その後の逃走手段も見事で、山岳地帯という、自然の要塞に絶対の自信をもってのぞんだ大がかりなマクロの視点での警備を、ゴルゴはミクロの視点で突破した。ゴルゴが日頃口にするとおり、まさに「完璧な警備などない」のである。
落日の陽を浴びつつジャヌーは何を思うのか
ジャヌーはゴルゴを「狡智な奴」と言っているが、銀行頭取の別荘へ令状もなく踏み込んだあげく、思い通りの場所へ避難させたり、ジャヌーの作戦に及び腰の上司を説得する様子は、相手の泣き所をピンポイントで突くこれぞ「狡猾」そのものであり、ゴルゴからみれば「君には言われたくない」というところだろう。
そんなジャヌーが、仕事を終え、ゴルゴを追っていたときとは別人の表情で、がらんとした部屋に一人夕日を浴びつつ椅子に座るラストは寂寞そのものだ。『螺旋』でゴルゴが撃ち抜いた時計は彼の余生を暗示していたのかもしれない。
この作品が読める書籍はこちら
野原 圭
最新記事 by 野原 圭 (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第100話『獣の爪を折れ』のみどころ - 2024年8月18日
- ゴルゴ13:第485話『欲望の輪廻転生』のみどころ - 2024年7月30日
- ゴルゴ13:第520話『未病』のみどころ - 2024年7月29日