この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第168巻収録。ウクライナ・エネルギー省幹部の狙撃事件に、たまたま絡むことになったジャヌー警部。引退を考えていたジャヌーだったが、現場でゴルゴの姿を目撃し、刑事魂にふたたび火がつく……。迷路のような運河網で展開される推理戦がみどころ。
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ゴルゴの強敵ジャヌー警部、リベンジなるか
『螺旋』で、時計の知識を遺憾なく発揮し、犯人をゴルゴと特定しながらも、組織の理不尽で逮捕に至らなかったジャヌー警部。その無念を晴らすべく奔走するジャヌーとゴルゴが繰り広げる、追いつ追われつのスピーディでスリリングな展開に思わず釘付けとなる。
サッカーワールドカップ・ドイツ大会を軸に複雑なダブルミッションを完遂しようとするゴルゴと、緻密に練った戦略と的確な指示により、その阻止をはかるジャヌーのチェスのように息詰まる頭脳戦は、まさに圧巻である。ジャヌーの圧倒的存在感は主役を喰ってしまうほどである。
ヨーロッパ社会の複雑な背景にせまる
ヨーロッパが舞台のときは、他国と国境を接しない日本では分からない様々に複雑な事情を垣間見せてくれるのも魅力のひとつだ。今回は河川が重要な役割を果たすのだが、河川にも国境があり勝手に他国の領域に踏み込めないのは当然である。
そこを利用するゴルゴはさすがであるそれにしても、時計職人を目指していただけあって、犯人を追いつめるジャヌーの姿勢は職人そのものだ。名誉も面子もからまないジャヌーが、他国の警察組織の内部事情に精通し、多くの組織人が持つ野心という欲を利用して駒のごとく自在に操る手腕には驚嘆するほかない。
宿命のライバル達の行方
ミッションの遂行とその阻止。相反する立場にいながらゴルゴとジャヌーの間に育まれていく「敵ながらあっぱれな奴」というリスペクトの感情が、表情やセリフからひしひしと伝わってくる。特にジャヌーは手強い相手と真剣に対峙すればこそ感じる、背中がぞくぞくする究極の「楽しさ」さえ、感じているのではないだろうか。
2人は『天空の毒牙』で再度対決することになり、ジャヌーは、代償として大きなものを失う。しかし、ゴルゴと出会ってしまった彼にとって、時計の分解・組立を友とする余生は、あまりに退屈すぎたのではないだろうか。
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野原 圭
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