この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第34巻収録。非合法の血液売買の闇を題材にしたエピソード。ジャクソン製薬の要人が連続して狙撃される事件が発生。銃弾を調べたところ、ゴルゴが愛用している銃から発射されたものだと断定。これによりCIAは事件の裏には国際的な機密が関わっていると判断する。しかし事件の発端はまったく別のところにあった……。脚本:北鏡太
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カリブに渦巻くどす黒い血だまり
ゴルゴといえば銃撃であり、血を見ないわけにはいかないが、カリブ沿岸に潜む血だまりは暗い闇色をしている。製薬会社が貧しいカリブ沿岸地域の子供達を誘拐して血液を盗み取り、アメリカへと血液製剤の原料として送り、会社がぼろ儲けしている、という憤懣やるかたない話である。
血液製剤による肝炎などの感染症については、日本国内でも訴訟に発展しているが、その背景にはこうした血液採取の問題も関連しているのではなかろうか。貧しいが故に、そんな悪徳ビジネスの片棒をかつぐパコも、彼に撃たれたベロニカも共に犠牲者といえる。
各都市や車、飛行機などの描画に注目
この作品は1977年の発表であり、日本でも庶民が海外旅行にようやく手が届くようになった頃だが、まだ、今ほど世界各地に旅行できるような事情ではなかった。そんな時代に、フィンランドのサウナ付きログハウスをはじめ、大都会・ニューヨークのビル街、南米・ニカラグア、アルゼンチンなどの風景が驚くほど詳細に描写されている。
また、依頼者・エドワルドの館の広大な庭、カーペットや調度品など邸宅内部の描画が富豪な様子を表わしている。さらに飛行機、車の質感も手に取るように伝わり、多くの読者の憧れを掻き立てたことだろう。
パコは死に場所を求めていた
製薬会社の事務所でゴルゴと鉢合わせしたロバートが、あまりの凄みに固まってしまう場面が面白い。死体や殺しなど修羅場をくぐっているはずなのに、人を撃ってきた後事も無げに階段を降りてくる「ゴルゴ圧」に圧倒され、すれ違ってから「ふーっ」とため息をついている。そんなことしている場合かと思うがわかる気もする。
ラストは古典的な決闘を思わせる緊迫感あふれるシーンであった。パコとゴルゴの目元だけをクローズアップし、コイントス後に銃声が響く。ベロニカを撃った後悔に苛まれていたパコにとっては、安堵の最期だっただろう。
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野原 圭
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