この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第34巻収録。犯罪者は発見しだい即時抹殺を旨とするカリフォルニア州の特殊警察に、新興ギャングの「スラム解放軍」を殲滅せよとの命が下った。一方、スラム解放軍には鉄鋼王ハーディの孫娘・キャサリンが加わっており、そのことで騒がれたくないハーディは、スラム解放軍の殲滅と、キャサリン確保をゴルゴに依頼する。脚本:北鏡太
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特殊警察部隊との圧巻のカーチェイス
25巻収録の『カリフォルニア軍団』に続き、同州が舞台となる本話。作中ではしっかり「二年前の事件」として『カリフォルニア軍団』の件にも触れられており、言わば続編のような内容でもある。
前作と同様、今回もまた敵部隊との壮絶なカーチェイスが見所となっており、凄まじいドライビング・テクニックでポルシェを乗りこなしながら拳銃一丁で追っ手を始末していくゴルゴの勇姿は圧巻。前作のモランド大佐には一歩及ばないかもしれないが、特殊警察の部隊長マックも敵役として良い味を出しており、ゴルゴと自ら相対して立派な散り際を見せている。
パトリシア事件をモデルにしたキャサリン
文庫版の解説でも述べられているように、大富豪の令嬢がギャングの仲間入りをするという本話の筋書きは、実在の「パトリシア・ハースト事件」を下敷きにしている。
ギャングによる誘拐から一転、彼らと犯行を共にするようになった「左翼のヒロイン」パトリシアは、本話発表の前年に懲役7年の判決を受けるものの、後に恩赦で釈放。その後はメディアにも積極的に露出するようになる。本話は、彼女をモデルにしたキャサリンがやはり有罪判決を受けるシーンで締めくくられているが、後のキャサリンが史実と同じ運命を辿ったのかは定かでない……。
娘が「汚される」のは殺されるより辛い?
実在のモデルがあるから余計にそう感じるのか、本話では孫娘を誘拐された鉄鋼王の焦燥や失望が、少ない登場シーンの中からもありありと伝わってくるようだ。命を奪われるよりも「汚される」という焦りの方が、こうした事態では引き立つのかもしれない。
1973年の映画『エクソシスト』も、グロテスク描写よりもむしろ、可憐だった娘が変貌して汚い言葉を吐くという点が観客のショックを誘ったという。実際、本話のキャサリンも「ちくしょう!」「警察のイヌが!」といった言葉遣いに染まってしまっており、鉄鋼王のショックは計り知れない。
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東郷 嘉博
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