この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第37巻収録。悪名高いブラック・ジャーナリストから、息子のスキャンダルをネタに恐喝をうけたキャリントン卿。彼は元凶であるメイスン夫人の抹殺をゴルゴに依頼するため、銀行から5万ドルを引き出す。が、ロンドン警視庁が誘拐事件の身代金を引き出したに違いないと勝手に勘違いしたため……。脚本:北鏡太
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貴族に紅茶……イギリス文化のエッセンス
エピソードごとに様々な国が舞台となる『ゴルゴ13』だが、今回の舞台はイギリスのロンドン。本話の狂言回し役であるヒューゴー警部が属する「スコットランド・ヤード(警視庁)」は、シャーロック・ホームズに親しんだ読者なら馴染み深いだろう。
イギリスといえばホームズの時代と変わらない階級制度が今もあり、貴族と平民がそれぞれの領分を守って社会を構成している。今回の重要人物は貴族のキャリントン卿で、そして警部に出すのはもちろん紅茶だ。短いページ数の中にイギリス社会のエッセンスが詰め込まれたエピソードといえる。

随所に見える掲載当時と今の金銭価値の違い
本話ではキャリントン卿が5万ドルの大金を銀行から引き出したことに警察が目をつけたというところから話が始まる。5万ドルといえば、1ドル=約300円だった当時の相場で1500万円ほど。
大金は大金だが、今となってはそこまで大騒ぎするほどでもない金額だ。他のエピソードにも言えることだが、長期連載ゆえの宿命というべきか、当時と現在の金銭価値の違いが見える部分が多い。同巻収録の『チャイナ・タウン』でも、闇組織の用心棒の報酬が月2千ドルという話をしている。こうした点に注目して作品を見てみるのも面白いかも?
謎解き系エピソードとしての面白さ
ホームズの国が舞台だからというわけでもないだろうが、本話は謎解き要素の強いエピソードだ。話の主軸は「キャリントン卿は何のために大金を引き出したのか?」「彼の不可解な行動の理由は?」といった謎で占められており、警部の視点を通じてラストに種明かしがなされる。
ゴルゴは一種の舞台装置として登場するのみ。こうした趣向のエピソードは他にも多いが、タイトルの含みも合わせて本話は謎解き物として秀逸な部類に入ると思う。それにしても、昨今の「日常の謎」系ミステリの流行を『ゴルゴ』は40年以上も前から先取りしていたのだ。

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東郷 嘉博

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