この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第176巻収録。インドの名門ハーリ・モータースが、画期的な燃費性能を誇る新型エコ・カーの開発に成功した。しかし、その性能を維持するために使われるバイオエタノールは、穀物の需要急増を引き起こし、ひいては食糧危機や環境破壊を誘発するものだった……。脚本:川泉賢祐
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自動車ビジネスをめぐる陰謀
燃料問題や排気ガスの規制など自動車に向けられる目はますます厳しくなるものの、自動車産業の重要性は変わっていない。ゴルゴシリーズでも『凋落した名車』『キメラの動力』など、企業や国の陰謀にゴルゴが関わっている。
本作の舞台はインド。21世紀はアメリカや中国に代わってインドが台頭するとの意見も多く、冒頭において自動車メーカーのCEOは、「インドは、真の自動車大国に変貌を遂げるでしょう」と大見得をきっている。その一方で技術の提供者として日本人教授を登場させて、技術はあっても活かせないような皮肉な日本の一面も描いている。

ゴルゴがねぎらう数少ない相手
自動車の構造図を入手したゴルゴは、特別な銃弾の製作をデイブに頼む。『軌道上狙撃』『宴の終焉』などにも登場する銃職人のデイブは、ゴルゴとともに年齢不詳の常連キャラクターだ。
最初に登場した『AT PIN-HOLE!』(1971年発表)でも既に中年の風体で描かれており、そこから50年近く経っていることを考えれば90歳以上、いや100歳超えか。本作でデイブは、「無茶を言ってくれる」「手間がかかったぜ」「そっちはもっと苦労したさ」と愚痴るばかり。しかしゴルゴに、「ご苦労だった」と言わせるのは彼くらいだろう。
ゴルゴに手を合わせる依頼人
本作で見逃したくないのは、狙撃後のゴルゴが回想する形で挟まれている依頼人とのやりとりだ。パールシー(ゾロアスター)教の聖職者と思われる人物がゴルゴに対して、「アータルとなれるのはもはや、あなたしか居ないのです」と告げている。
“アータル”とは最高神アフラ・マズダーの息子で、怪物となったアジ・ダハーカを退治した火の精霊の名前。ただしゴルゴは、「俺はアータルなどではないがやってみよう」といつもの反応を見せている。それでも、「まさしくあなたこそアータルの聖火だ」を手を合わせた聖職者にゴルゴは何を思ったのだろうか。

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研 修治

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