この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第176巻収録。一対一の対決では無敗を誇る狙撃手・ブレットが登場するエピソード。ブレットは愛する息子・ジョンの臓器移植手術の費用を捻出するため、ゴルゴ抹殺の仕事を高値で請け負う。しかし、この話の裏にはゴルゴとブレットを対決させる賭け試合が仕組まれていた……。脚本:ながいみちのり
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ゴルゴと真っ向勝負の一騎打ち
ゴルゴとの一騎打ちと言えば対決モノ御三家である『落日の死影』『鬼畜の宴』『バイオニック・ソルジャー』を思い起こさせる。
『落日の死影』でのAX-3との洞窟対決、『鬼畜の宴』のスパルタカスとは月下のコロシアム、『バイオニック・ソルジャー』のライリーとはジャングルでの21日間の死闘。プロフェッショナル同士の間合いを測る睨み合いに思わず息をつめてしまう。
今エピソードもこれらの名作に連なる名勝負が繰り広げられ、読みごたえ十分だ。冒頭シーンの太陽が頭上にある時間帯からゴルゴとブレットはどちらも動けない。日が傾き、沈むまで『落日の死影』同様の長時間の間合いの見切りあい。一流同士の闘いとはかくあるものか、こちらまで息をするのを忘れてしまうほどだ。
教授は何をしたかったのか
教授は一体、何をしたかったのか。と言うのも教授はブレットにゴルゴ殺害を依頼しておいて、ゴルゴの勝利にビットしているのだ。しかも札束の描写から推測するに双方50万ドル(100ドル札×1,000枚=10万ドルが5ブロックずつ)に過ぎない。
このギャンブルにおける教授の期待値は“(ゴルゴ勝利の確率×払戻金)/賭け金”で算出できるので、仮にゴルゴ勝利の確率を50%とするなら、(50%×50万ドル)/50万ドル=0.5(期待値)となる。期待値0.5とは勝ち負けが平準化されると賭け金が半分になるということで、賭ける側にはうまみのない(胴元だけが儲かる)手を出してはいけないギャンブルの典型だ。
ビーバーの毛は最高級品の証
ブレットが病床の息子ジョンに『本物のビーバーのカウボーイハットだぞ!』とお土産を渡す。“ビーバー”とは河川にダムを築くあのビーバーだ。日本に生息していないのでなじみは薄いが、ビーバーの毛はフェルトの最高級品として用いられる。15世紀ごろ、ヨーロッパではシルクハットの材料として重宝(適度な硬度としなやかな手触り)された。
重宝されすぎて絶滅寸前まで追い込まれた悲しい歴史がある。現在でも“Pure Beaver”と記されたフェルトは最高級品の証で、カウボーイハットなら20~30万円はくだらない。形見となってしまったハット。ジョンはきっと大切にすることだろう。
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片山 恵右
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