この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第104巻収録。米国防総省は遺伝子工学を使った人材生産を推進。ゲリラ戦の最強兵士と、陸上競技の天才ランナーの遺伝子を掛け合わせた最強兵士・ライリーを完成させた。プロジェクトの責任者は、ライリーが世界最強の特殊工作員であることを証明するため、カンボジアの密林でゴルゴとの一騎打ちをセッティングする。脚本:竹内亨
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ゴルゴ13のすべてが詰まったエピソード
ゴルゴ13の魅力はひとつではない。ゴルゴの人間離れした狙撃のテクニックと自身のルールを貫き通すプロとしての姿勢、ハードボイルドを体現したようなスタイル。善も悪も人間の一面なのだと知らしめる周囲のキャラクター。シナリオに取り入れられる最先端以上の社会情勢。ただの殺人の端々からにじみでる人情味。
どれもがゴルゴ13には欠かせない要素だが、もちろんエピソードによって濃い部分、薄い部分がある。だがこのバイオニック・ソルジャーはゴルゴ13の魅力がすべて濃く描かれているエピソードなのだ。加えてそうそう現れない強力なライバルまで出演する。これだけの要素が入ってよく纏まったものだと一ファンは感動すら覚える。

世界最強を決めるための依頼
今回ゴルゴのライバルとして用意されたライリーのルーツはアメリカ国防省、つまりペンタゴンが秘密裏に実行した、優秀な人間兵器を生産する実験にある。ライリーは選ばれた精子と卵子をもとにして生まれ、特別な教育を受け、さらには絶え間なく彼の身体に合わせたドーピングをされている。
対して、このエピソードではゴルゴの強さの一端が明かされる。ゴルゴは定期的に深山に籠り精神修行や過酷なトレーニングを行っていた。その結果、身一つで感覚を極限まで研ぎ澄ませられるようになったのだ。他者に作られ管理される最強の人間マシンと、自ら進化する最強の人間のどちらに軍配が上がるのか。そう考えれば結末は想像がつく。
ゴルゴの見せるリスペクト
「その男は……金で仕事を選ばない、内容で選ぶ、のだ……」ゴルゴが敵地へ乗り込むための老兵ヘリパイロットを雇ったときのセリフだ。ゴルゴは仕事ぶりから冷血漢、マシンそのものだと評されることが多い。しかしゴルゴは自分と同じ本当のプロフェッショナルへは驚くほど素直に尊敬の念を示す。
もちろんおべっかなど余計なことは話さない。だが、仕事ぶりを認めた相手へは礼も言うし、彼なりの言葉で賛辞を送る。このヘリパイロットは皮肉にもライリーの父親だとラストで明かされる。ゴルゴのドライな人間味も、物悲しい運命のいたずらも、ゴルゴ13という作品の魅力である。

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大科 友美

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