この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第61巻収録。世界中で採掘されるダイヤを独占し、市場を操作するデ・ロアズ社。15年前、ロアズ社の社長・ソロモンの軍門に下り姿を消した鉱山オーナー・ホワイトロックは、オイルマネーをバックに乾坤一擲の復讐劇を挑む。彼はソロモンが秘蔵する巨大ダイヤの狙撃をゴルゴに依頼するが……。脚本:工藤かずや
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狙撃対象は永遠の輝き
このエピソードでゴルゴが狙うのは人命ではない。1050カラットもの大きさのダイヤモンド、ギャラクシー・オブ・キンバリーだ。通称ギャラクシーは作中で世界最大と表現されている。確かに現実にそれだけの大きさのカット済みダイヤがあれば間違いなく世界最大だ。
またエピソード内に出てくるデ・ロアズという企業とカルテルのスタイルは実在の企業と独占状況をほとんどそのまま描いている。2000年代になってからその企業の独占はほとんど消え去ったとされているが、ダイヤが希少で永久の輝きを持つという幻想と憧れが今もあるのは読者各位もご存知の通りだろう。
それでも砕ける場面は美しい
ゴルゴは「ダイヤを傷つけるには、ダイヤ以外はなし」と言って至近距離から依頼者のダイヤを狙撃する。ここでは依頼者のダイヤには傷ひとつつかない。確かにダイヤは他の宝石や鉱石と比較しても硬度は著しく高い。ダイヤはダイヤでひっかかなければ傷をつけられることもない。酸や高温にも強く、安定性がある。ところが実は有名なダイヤモンドを粉々に砕く分にはそう難しくない。
普通のハンマーでも衝撃を与えればダイヤモンドの特性上すぐに砕けてしまうのだ。砕けやすいからこそ美しくカットをするのが難しい。とはいえ、距離がある場所から大きいと言っても大人の握りこぶしよりずっと小さいダイヤを、ダイヤ以外傷つけず狙撃するのは並大抵の技ではないことは間違いない。それにゴルゴに狙撃されたダイヤも、老職人ワイズコフののみで砕け散ったダイヤも、砕けた瞬間が美しく、魅力的な場面だ。
老職人ワイズコフのプライド
筆者の周囲だけかもしれないが、このエピソードを他のゴルゴファンと話題に出すと「あの凄腕職人の」やら「ゴルゴを弟子にしたあの人の」やら、必ずといっていいほど二言目にはワイズコフが登場する。ワイズコフの登場シーンは多くはない。しかし印象的なのは間違いない。ワイズコフがプライドをかけてカットしたブリリアントカットのダイヤにのみを打ち込む場面はゴルゴの狙撃シーンのように緊迫感がある。
ゴルゴの仕事を知り「彼がなんと考えようと……わしにとっては弟子だ!」と啖呵を切る表情も一度見たら忘れないような迫力がある。それにしても、ここまでプライドの高い熟練の職人に自らがカットしたダイヤを砕かせるゴルゴはいよいよマシーンめいている。彼の仕事に情緒や感情は必要ないことを改めて見せつけられた。
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大科 友美
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