この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。伝統あるシドニー・ホバート・レース。臨時クルーとしてヨットに乗り込んだゴルゴに、シドニー警察のヒューイットが立ち塞がる。ゴルゴの目的とは一体…? 女性スキッパー・エリスとのほのかなロマンスも楽しめる感動の海洋アクション。
見逃せない精悍なヨットマン姿のゴルゴ
今回は日本人・アズマとしてヨットに乗り込み、オーストラリアでのヨットレース中、超人的な身体能力を遺憾なく発揮する。出航後、アズマが手配中のゴルゴではないかと疑うクルー達に対し、的確な指示で瞬時にヨットの速度を上げ、有能で不可欠なクルーとして周囲に認めさせる場面には思わず唸る。
ミッション遂行のため、命がけで怒濤の嵐を乗り切り、ゴール直前にヨットから去っていく。アズマの卓越した技術や能力に裏打ちされた勇気と実行力に、捨てたはずの「女」を思い出すエリスと彼に心からの敬礼を送るクルー全員の姿に魂が震える。
理想の上司にふさわしい?抜群の統率力
荒れ狂う嵐の場面の壮絶な迫力に思わず船酔いしそうになる。操舵やセーリングについての技術解説はヨットを知らない人にとっても面白く、特に嵐を乗り切る最後の手段「ビームオン操船」には驚いた。
通常、ゴルゴは単独行動だが、クルー達の疲労を冷静に観察し、さりげなくエリスに助言したり、ピンチの状況には率先して危険な仕事に挑み、仲間の士気を向上させて団結心をより高めていく。「うちの上司もこうあってほしいなあ」と思う向きもあるだろうが、ゴルゴが「課長・アズマ十三」として理想の上司に選ばれることは、多分ないと思う。
クルーの心に深く刻まれた海の神の化身
船は「板子一枚地獄の底」といわれ、クルー達は派手な喧嘩もするが、基本的に協力しなければ一蓮托生である。そして一度信頼し、生死を分かち合った者達は、どんな人間だろうと決して警察に売ったりはしない。
ゴルゴの2発目の銃弾が、依頼に含まれるものかどうかはさだかではないが、ドルフィン号への粋な謝礼なのかもしれない。船には女性の名前が多く、英語・フランス語でも代名詞は、Sheという女性形なのは、海の神ポセイドンが男だからだと思われる。エリスやクルー達は、アズマをポセイドンの化身として生涯心にとどめおくだろう。
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野原 圭
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