この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第65巻収録。アイリッシュへの不当な差別に不満を募らせる若者・エドは、IRAへの参加を決意する。一方、ゴルゴはイギリス政府の要人ばかりを狙うテロリストを始末するため、上院議員が宿泊するホテルへ潜入する。そして“ボンバー”と呼ばれる工作員を割り出すが、その人物は意外にも……。脚本:本田一景
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最多登場の武装組織IRAが題材
タイトルの「アイリッシュ・パディーズ」とは、本作によると北アイルランドからの移民を馬鹿にした呼び方とある。1990年代の末に停戦合意がなされて以降は随分と落ち着いているものの、本作が掲載された1984年はIRA(アイルランド共和軍)によるテロ行為がまだまだ頻発していた時期で、本作でもIRAの活動がメインテーマとなっている。
この作品以外でIRAが関わる話には『ヒューム卿最後の事件』『硝子の要塞』『シリコンアイランド』などがあり、それぞれの時代背景を描写したIRAの変遷は見どころだ。
赤裸々に描かれる移民の現実
イギリス政府からIRAの爆弾実行犯を殺害するよう依頼されたゴルゴは、正確なターゲットこそ突きとめていないものの、ターゲットへの連絡方法とその連絡員の情報を伝えられて、その後は殺害まで出番がないままとなる。むしろ本作で描かれているのはアイルランド移民の父と息子だ。
当時のイギリスを反映してか、父息子ともに日雇いの職にしかありつけない。いや、そんな職にすらあぶれてしまうような厳しい毎日となっている。しかしながらゴルゴにとってはそんな状況など関係ない。ターゲットを確認したゴルゴはためらいなく引き金を引いて依頼を完了する。ゴルゴファンにすれば「ああ、やっぱりね」だろう。
アンハッピーな最後は劇画ならでは
その後はエピローグ的な展開。ターゲットの殺害を終えて去っていくゴルゴにぶつかった息子は「ば、ばかやろう 気をつけろ」と捨て台詞を吐く。
普段ならゴルゴにぶっ飛ばされていてもおかしくないのだが、ゴルゴが何も言わずに去っていったのは事件直後のもめ事を避けたためか、他に意味があったのか。父と息子の関係をゴルゴが知っていたと推測するのは穿ちすぎだろうか。
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研 修治
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