この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第130巻収録。イギリスとアイルランドの間にある小さな人工島。四方を防弾ガラスに覆われたこの島を、人は「硝子の要塞」と呼んだ。要塞の主は臓器売買でIRAの活動資金をつくるファーガス・ウォルトン。この極めて狙撃が困難な要塞に立てこもるウォルトンの暗殺を依頼されたゴルゴは、どのような方法で仕事を完遂するのか……?
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何が幸いするかわからない女優・俳優への道
映画監督・山田洋次は悩んでいた。新作映画で高倉健の相手役の格好悪い男がみつからない。何気なく目にしたレコードジャケットに写る、短足で顔の長い男に「こいつしかいない!」と叫び、武田鉄矢の「幸せの黄色いハンカチ」出演が決まる。
工藤夕貴は「バトルロワイヤル」のオーディションを受けるよう事務所からいわれたが、気が進まなかったので、超ふてくされた演技をしたら、バカうけして選ばれてしまった。この話をバニッサが知っていたら、バカバカしくて女優などさっさと諦めてあのように悲惨な目に遭わずにすんだかもしれない。
いつもながらの超絶技巧にため息
今回の跳弾を利用した狙撃については『魔女の銃弾』にも詳しいが、静止した水面でなく、動く波を利用してさらにヘリコプターから狙うという難度の高さには、さすがのオリンピック金メダリスト・JJも舌を巻いたようだ。
その辺りは、生死を賭けた膨大な経験値を持つゴルゴと、競技として決められたルールの中で結果を出すことを主眼としていたJJとの差だ。ゴルゴは日本に島を所有しているようだが、今回見積もってもらったステンドグラスつきの別荘建設は見送ったと思われる。もちろん建設会社にそれなりの見積料は、はずんだのだろうが。
民族独立の目的は何なのか
カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」は臓器移植目的で作られたクローン人間達の人生を描き、人間とは、生命とは何かという根源的な問題を問いかけ、ウォルトンのいう「死」とは何か、という問いに通ずる物語である。
しかし、民族独立のために手段を選ばないとはいえ、このような金で勝ち得た独立に何の意味があるのだろうか。臓器売買は臓器移植が合法化された時点で既に危惧されていた。これを読むと、むしろ売買を前提とした勢力により合法化されたのではないかと思いたくなってくる。人間の罪深さを改めて思い知らされる作品だ。
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野原 圭
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