この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス212巻収録。麻薬撲滅組織を壊滅させるミッションを描く潜入アクション。武装蜂起が危惧される麻薬撲滅組織「トックハン自警団」の殲滅を請け負ったゴルゴは、自警団に夫を殺害された過去をもつ女戦士・ヘイゼルとともに敵地へと乗り込むが…。脚本:夏緑
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幕末・新撰組をおもわせるトックハン自警団
ある農村でネズミが作物を荒らすので狐を放した。ネズミはいなくなったが、今度は狐が繁殖して作物を荒らした、という話がある。こういう例は枚挙に暇がない。動物同士なら食物連鎖を考えて猛禽類フクロウを放せば良かったのだが、人間の場合は新撰組の例もあるようにコントロールはきわめて難しい。
麻薬撲滅のためとはいえ、目に余る便乗殺人まではたらくトックハン自警団も暴走してしまった最悪の事例といえる。また、ヘイゼルの働く射撃場での、弾丸の入射角の解説も興味深かった。ゴルゴには朝飯前の射撃であり、釈迦に説法ではあるが。
あのゴルゴがまさかに天皇からお言葉を!?
麻薬には人体に有害なだけのものもあるが、多くは痛みの症状を和らげる効果があり医師の処方で使えば問題ない。心臓の薬を健康な人が服用すれば健康を害するように症状もないのに麻薬を使うのが悪いのだ。日本の麻薬犯罪や取締まりについては、元厚生省麻薬取締捜査官・瀬戸晴海著『マトリ』に詳しい。
瀬戸氏は穏やかで可愛い名前とはうらはらに、精悍な風貌と猟犬のように鋭い目つきが髭を生やしたゴルゴそのものである。彼は危険ドラッグ流行の際、捜査の陣頭指揮をとり撲滅に貢献したことにより平成天皇から感謝のお言葉を賜っている。
心優しき勇気ある魔女・ヘイゼル
トックハン自警団が国内麻薬組織を壊滅してしまった結果、皮肉にもISに麻薬のルートを乗っ取られてしまったのは、ドゥマゲテ大統領にとって大誤算だった。加えて自警団が政権をも脅かすとあれば、手をこまねいているわけにもいくまい。
ゴルゴは、恋人を自警団に殺され、その復讐のためだけに生き延びているヘイゼルが、死に場所を探していると考えた。だから自警団の壊滅に協力させるべく、同行を許したのだろう。寛大な神は心ならずも魔女となったヘイゼルの罪を許し、恋人・アレハンドロの待つ天国へと温かく迎えてくれることだろう。
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野原 圭
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