この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第19巻収録。密偵・利平治が、昔の仲間・鷹田の平十と再会する。平十は畜生ばたらきで有名な火間虫の虎次郎から、腕利きの浪人を紹介するよう頼まれ困っていた。利平治から聞いた平蔵は、盗賊・殿さま栄五郎に扮し、虎次郎一味へ潜入するが……。
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老いた密偵の苦悩
『熱海みやげの宝物』で鬼平の密偵となった馬蕗の利平治だが、密偵としての活躍が出来ない事を悩む日々。自らを救ってくれた鬼平に対しての恩義が果たせない不甲斐なさを感じているのだろう。その利平治が盗賊口合人の鷹田の平十とばったり出会う。腕利きの盗賊を回せという兇賊からの依頼を断れない平十に対して、利平治は一肌脱ごうと考えた訳だ。
鬼平に相談を持ち掛け、腕利きの盗賊を潜入させようとするも適任がいない。いつものように鬼平がその役を買って出るものの、溢れる上品さが隠せなかったのだ。そこで粂八、“殿さま栄五郎”なる盗賊がいた事を告げ、鬼平は上品な盗賊としての潜入捜査へといざ進むのだった。
まんざらでもない鬼平
溢れる上品さを指摘された鬼平だが、少し上機嫌に久栄とお園へ自らの上品さを再確認してしまうあたりが微笑ましい。“立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花”美しい女性の立ち居振る舞いが、それらの花のように完璧であるという言葉だ。
男性の鬼平に対してこの発言をするという事は、久栄とお園は完全に鬼平をからかっていたという事。普段は厳しい長官としての顔を見せる鬼平だが、奥方をはじめ女性には弱い部分もあるのだろうか。顔を赤らめて怪訝そうな表情も、どことなく嬉しそうに見えたぞ。
騙りのバレた鬼平
鬼平犯科帳では名前や姿を偽って当人を騙るストーリーは多いのだが、本作では早い段階で騙りがバレたな。あっという間にバレてしまうのだが、逆に殿さま栄五郎を騙るに至るまでのストーリーが非常に面白いのだ。さて、身分は偽物としても、その腕前が偽物とは誰も言っていなかったな。
殿さま栄五郎を凌ぐ鬼平の一刀流の前に、盗賊たちは成す術もなかったのだ。これぞ鬼平流の盗賊成敗ではなかろうか。鷹田の平十は残念な事となってしまった。もしも鬼平のもとで働いてくれたならば、きっと優れた密偵になったと思うのだ。キャラクター的にも絶好な盗賊だったのだがな。
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滝田 莞爾
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