この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第53巻収録。平蔵、左馬之助の友人・堀平右衛門は、剣の腕はからっきし。家庭でも女房の尻に敷かれるダメ亭主である平右衛門。若い頃に好きだった妓・お民の言葉「きっと立派な方におなりになります」という言葉が胸をえぐる。そんな平右衛門が、火盗改方から脱走した賊を追跡することとなり……。
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高杉道場の仲間たち
平蔵が若かりし頃、妾腹の身分も相まって無頼を続けていたのだが、平蔵がその境遇を晴らすかの如く打ち込んだ剣術。平蔵の青春とも言える高杉道場での修行は、火盗改メ長官としての技量に留まらず、人生そのものを生き抜く術となったのであろう。その高杉道場での剣友が岸井左馬之助だ。
本作においても左馬之助は登場するのだが、剣術仲間としてメインに据えられているのは平右衛門で、彼は平蔵の強さに憧れ慕う若輩という描写がなされている。気弱でどことなく頼りの無い平右衛門が歳をとり、どのような生き方をしているか描かれた作品だ。無頼時代の平蔵エピソードが好きな方は是非おさえておきたい一作だろう。
くさやはくさい
鬼平の好物と問われれば、くさやを挙げる方も多いだろうか。もちろん平右衛門も大好きのようだが、あのにおいが家族には不評のようである。伊豆諸島の新島が発祥ともいわれるくさやだが、臭い魚という意味からクサヨ(ヨは魚を意味する方言)、転じてクサヤと呼ばれるようになったそうだ。
日本橋の魚河岸で呼ばれ始めた記録が残っている事から、江戸時代には既に高級品として扱われていた事が分かるのだ。俗にくさやは臭いと言われるのだが、小生は築地の魚河岸で生まれ育ったせいか、くさやのにおいを嗅ぐとよだれが溢れてきてしまう。一体何が臭いのだろうか、あの芳醇な香りは堪らなくお腹を空かせて来るのだ。
そのような奇特な人間もいるのだが、一般的には非常に臭い食べ物として評されているな。元々、幕府に塩年貢として納めるほど貴重だった塩を、大切に大切に使って干物を作っていたそうな。ちなみに塩以外の調味料などは一切入っておらず、まさに塩の発酵食品という訳だな。
はじめての人
現代でこそ性の成熟が早いとは言われるものの、江戸時代ともなれば気難しい男性や女性も多かったのかもしれないな。平右衛門もその一人で、男性になるデビューが比較的遅かったようだ。ともすればその思い入れも人一倍かもしれない。
平右衛門が思いを寄せた初めての人との再会が美しく描かれているぞ。再会を果たした平右衛門の心持ちと、その変化が見事に表現されていると思うのだ。誰しもが持っている甘酸っぱい経験だ。胸をキリリと締め付けるような懐かしい思いに浸るにも、本作はお勧めの一作となっているぞ。
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滝田 莞爾
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