この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第52巻収録。京極備前守に呼び出しをうけた平蔵。将軍が鷹狩りをする、鷹場の鳥見役が殺された事件の調査を命じられる。独自の調査によって、早速、一味のアジトに迫る平蔵。しかし鳥見役の殺害は、平蔵をおびき寄せるために仕組まれたものだった……。
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狙われる鬼平
ページを開いた瞬間に鬼平と悪者との対峙から始まるという、非常に珍しい始まり方の物語だ。劇画界隈では稀にある表現方法で、物語が進むにつれて謎が解明されていくパターンになる。鬼平犯科帳シリーズでは開幕からのこの手法はあまり用いられていないはずだ。
夢オチやストーリー途中で回顧的に用いられる事はあったと思うのだが。鬼平を取り囲む悪者の正体やいかに。何故、鬼平を斬ろうと目論んでいるのか。派手なアクションと江戸時代の武家社会がもつ厳しさを知りたい方にはお勧めの一本だ。
鷹狩を取り巻く環境
鷹狩という単語は非常に有名なのだが、比較的多くの方が勘違いされている部分があるのだ。鷹を追って、鷹を仕留める狩りという勘違いの部分だな。実際には鷹匠が鷹を操って、鷹に小動物を追わせて狩る方法を鷹狩と呼ぶぞ。
将軍はどのあたりで鷹狩をしたかという話をしよう。江戸近郊の代表的な鷹狩スポットとしては、小菅御殿、井の頭公園、青戸御殿が有名だろうか。今では跡地として名称が残るに留まるが、散歩も兼ねて訪問するのは面白いと思うぞ。
これらの場所は将軍が鷹狩をする際の休息所として設けられたので御殿の名前が付いているという訳だな。作中にある通り、鷹狩は戦の修練を兼ねているのだが、実際には鳥見役人が厳重に将軍の移動経路などを決めていて、あまり戦の練習にならなかったという記録も残されているぞ。
若気の至り
鬼平を恨み斃そうと目論む事は、武士の世界において仕方ない部分でもある。江戸時代は特に怨恨や意趣返しで命のやり取りをする事が多かったようだ。若いころの平蔵が仕出かした一つの行動が、他人の人生を大きく変えてしまうとは誰にも予想は付かないだろう。これこそがバタフライ効果ではなかろうか。
初期鋭敏性と言われる事もあるが、蝶が羽ばたけば無関係などこかで嵐が巻き起こる。などと表現される事も多いな。正直、平蔵にとっては迷惑千万な話だとは思うのだが、それでも己の若き日の無頼を反省して責任を取ろうとする姿勢は格好良いものだ。アクションあり、武士の覚悟ありの、内容の濃い作品となっているぞ。
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滝田 莞爾

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