この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第12巻収録。勘定方同心・細川峯太郎に、同僚・伊藤清兵衛の次女・お幸との縁談話が持ち上がる。だが、細川は茶屋に勤めるお長にぞっこん。そして、お長の亭主で行方不明になっていた友次郎が、舞い戻ってきたことで話は意外な方向へむかう。友次郎は平蔵と因縁がある、ある男と繋がっていた……!
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隅に置けない同心、細川
算盤方同心とはつまり内勤の役目を持つ者で、その中でも出納管理をする同心と考えると良いだろう。探索に掛かる経費を管理したり、経費の精算業務、同心たちの給与まで含めて、火盗改メの財布を管理する大切なお役目だ。
しかし当の細川峯太郎は算盤の能力には長けているものの、探索方の木村忠吾などからは嫌味を言われて辟易としているようだな。内勤は外勤に比べて気楽だ、などと忠吾は思っているのかもしれない。
そんな嫌味に耐えかねてか細川は探索方で働きたいと思ってはいるものの、鬼平に対しても暖簾に腕押しのような態度の細川へ配置転換の命令を出すには難しいという判断が求められたのであろう。
鬼平からは男色の気まで疑われていた細川だが、裏ではちゃっかり女性との関係を持っていたのだ。色の場を鬼平に目撃されただけではなく、無頼者に打ちのめされるという失態を演じた細川。鬼平の思惑は細川に通じるのか、そして細川の恋愛の行方は。気になるエピソードがてんこ盛りだ。
内勤と外勤の衝突
火盗改メにおいて探索方はまさに捕縛や調査など、直接業務ともいえる花形の部署だろう。一方で算盤方は間接業務といった扱いになるだろうか。
現代社会でも直接業務と間接業務の間における衝突といった物は頻繁に目の当たりにするものだ。どちらが上、どちらが下、といった感覚で捉えてしまうのは人間の性かもしれないな。
しかし適材適所として分業制が敷かれているからこそ、探索方は直接業務に専念する事が出来る事を忘れてはならないと思うのだ。例えば調査に掛かる経費精算をも全て探索方が行ったならば、きっと探索に割ける労力は減るだろう。それは治安の維持という面から見てもマイナスだ。
だからこそダイレクトに治安の維持に関わっているようには見えない算盤方であっても、治安の維持に貢献していると言えるのだ。
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失恋は人を育てる
知らぬとは言えども盗賊一味と同心の恋は成就するはずもなく、細川の恋は悲しい別れという結果になってしまう。しかし、お長と細川は心の底から愛し合っていたのだろう。
心が通じていたからこそ、お互いを尊重出来たのではないかな。立場は違えども愛し合う二人の感情、そして思いやりがしっかりと描かれていたと思う。
人は辛い別れを経験すると、その経験をバネに更なる成長をすると言う。細川の場合には妻を娶り、新しい人生の幕開けとなるのだから、今落ち込んだとしても明日からは頑張らねばならないのだ。それが人生であり、未来へと繋がる道を歩む事になるのではないかな。
まだまだ男としても未熟な細川だが、『泣き男』『二度あることは』などの作品においても、どことなく頼りない同心としての一面を見る事が出来るぞ。本作で細川に愛着を感じた方にはぜひお勧めの作品だ。
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滝田 莞爾
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