この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第72巻収録。ソ連代表部の次席代表・マリクは近く行われる刷新人事で、自分が更迭される運命にあることを悟り、ある情報を手土産にアメリカへ亡命することを決意する。だが愛人であった女性諜報員が、自分を裏切ったことへの報復としてゴルゴにマリク抹殺の依頼をしてしまう……。脚本:北鏡太
スポンサーリンク
長い腕すらも届かないターゲット
ソビエト連邦崩壊前の1986年に発表された本作。東西冷戦下のデタント(緊張緩和)におけるKGBの微妙な状況が描かれている。KGBニューヨーク支部長のレオン・ニコラビッチ・マリクは部下からの信望も厚くなかなかのヤリ手ながら、「彼がいなくなれば、わが代表部も、だいぶ風通しがよくなる」とソ連大使からも疎まれているのが実際のところ。
タイトルの“KGBの長い腕”は『クレムリン名簿』などにも登場する表現。しかしアメリカに亡命したレオンがターゲットとなったことで、長い腕すら届かない意味もあってゴルゴに出番が回ってくる。
現代でも後を絶たない亡命者
『色あせた紋章』『依頼者の明日』『真実の瞬間』など亡命を扱った作品は数多い。本作のように東側から西側に逃れた人もいる一方、西側諸国からソ連などに移った人もいたが、東西冷戦が終わるとグッと少なくなっている。もっとも現在でも亡命を試みる人は後を絶たない。
『欲望の輪廻転生』『1億人の蠢き』などでも亡命した人々登場する。こちらは中国から政治的、宗教的な理由での亡命だ。この他に紛争地から逃れる意図で亡命する人や経済的な理由で亡命する人もいる。阻止するのか手助けするのかは分からないが、ゴルゴの出番はまだまだありそうだ。
短い腕で射殺したゴルゴ
初期は短銃での射殺やナイフでの刺殺を度々行っていたゴルゴだが、その後はもっぱら中・長距離の狙撃が多くなっている。しかし長い腕が届かないターゲットにゴルゴは一計を案じて近づいた後、リボルバーで眉間を撃ち抜いた。
描かれたのを見ればあっけない方法ながら、制服を信用したくなる人間心理をついたアプローチに「なるほど」と思った読者も多いだろう。ひとつ気になるのは射殺される直前にゴルゴを見たレオンが、「あっ、お、おまえは!?」と言っていたこと。KGBの高官でもあったレオンは何かの事件でゴルゴを見知っていたのだろうか。
この作品が読める書籍はこちら
研 修治
最新記事 by 研 修治 (全て見る)
- ゴルゴ13:第644話『心を撃て!』のみどころ - 2024年11月28日
- ゴルゴ13:第643話『怪力戦士イヴァノバ』のみどころ - 2024年11月11日
- ゴルゴ13:第642話『女の平和』のみどころ - 2024年10月1日