この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第49巻収録。ソ連に亡命した過去をもつオーストラリア労働党の元幹部・ハワード。郷愁にかられた彼は宇宙工学の権威パブロフ博士を連れての国外脱出を決意。病気を装い「転地療養」という形で脱出を図る。彼らの帰国を阻止したいKGBのワシンスキー大佐は作戦の要としてゴルゴを雇うことを考えるが、ゴルゴのターゲットはまさかの……? 脚本:北鏡太
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1980年代のソビエト連邦
ソビエトの解体にともない分割されたKGB(ソ連国家保安委員会)ながら、ゴルゴシリーズではその活躍を読むことができる。同時に東西冷戦下におけるソビエト連邦の政治体制や社会状況なども興味深く描写されており、メインに描かれているKGBのワシンスキー大佐ですら組織の中の歯車に過ぎないことが良くわかる。
『英雄都市』でも登場するワシンスキー大佐はゴルゴによって部下らを狙撃されたことが初めての失敗となり、そして本作でとどめを刺されることになる。今わの際で「ゴルゴさえいなければ……」と思っただろうか。
東側への亡命と帰国
本作では興味深い人物が登場する。元オーストラリア労働党の幹部で、30年前もにソビエトへと亡命したハワードだ。どうやらスパイとなったことがばれてソビエトに亡命したらしく、ワシンスキー大佐に、「オーストラリア政界にとどまっていれば……きみはいまごろ首相になってかたもしれんな」と言われるほど有能な人間だったらしい。
わずか30年前には政府高官すら東へ西へと亡命していた時代があったのは隔世の感がある。そのワシンスキー大佐、偶然出会った旧知のハワードが再度西側への亡命を企てていたことに気づくのはさすがと言うべきだろう。
最後の締めで登場するゴルゴ
しかし再度の亡命を阻止できなかったところは、ワシンスキー大佐も焼きが回ったと言えそうだ。オーストラリアにまで乗り込んだ大佐だが、護衛にアメリカ艦隊が出動しオーストラリア政府の暴露により行き詰ってしまう。最後の手段でゴルゴへ依頼しようとしたところ、先行した依頼―おそらくはソビエト政府―によりゴルゴに眉間を撃ち抜かれている。
なお、ゴルゴの登場はわずかに3コマ、彼が運転する車の描写を含めても4コマだけとなっている。同様の描き方をした作品には『遠い隣人』などがある。わすか数コマでも抜群の存在感を示すゴルゴはさすがだ。
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研 修治
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